ロンドン全域に拡大 超低排出ゾーン「ULEZ」とは何か 通行料金/対象車両は? 

公開 : 2023.02.01 06:05

英国の首都ロンドンでは、大気汚染の改善のために「ULEZ」規制が設けられています。排出ガスの基準に満たない車両には通行料金が求められますが、今年8月にはロンドン全域にエリアが拡大される予定です。

ロンドンを走るにはお金がかかる

英国の首都ロンドンには「超低排出ゾーン(ULEZ)」と呼ばれる規制区域が設定されており、一部の車両は通行時に料金を支払う必要がある。その全容を紹介する。

ロンドンのULEZは2019年に導入され、市内を走る数十万台の車両に影響を及ぼしている。バーミンガム、エディンバラ、マンチェスター、オックスフォードなど、国内の他の都市も追随する予定だ。

ロンドンULEZは2019年に導入され、今年8月には対象区域を拡大する予定。
ロンドンULEZは2019年に導入され、今年8月には対象区域を拡大する予定。

ULEZは、現ロンドン市長のサディク・カーン氏が大気汚染を改善するために導入したもので、年式が古くて汚染度の高い(排出ガスに含まれる有害物質の量が多い)車両は市内への進入を有料とする制度である。2017年に始まった施策「T-Charge」に代わって導入された。

ロンドンを頻繁に運転する人、または旅行やビジネスで訪問する人のために、知っておくべきことをまとめる。

ULEZの対象エリア・対象車両は?

対象となるエリア

導入当初、ULEZはロンドンおなじみの渋滞税(CC)と同じエリアを対象としていた。2021年10月25日には、北環状道路と南管状道路の内側のエリア全体に拡大された。

カーン市長はロンドン交通局(TfL)に対し、2023年8月29日までに、ULEZの対象エリア拡大、つまり事実上の規制強化について協議するよう求めている。

ディーゼル車の場合、ユーロ6に適合していなければULEZ料金の対象となる。
ディーゼル車の場合、ユーロ6に適合していなければULEZ料金の対象となる。

これにより、西はロングフォード、北はウォーザン・クロス、東はノース・オッケンドン、南はビギン・ヒルまで、M25高速道路内側のほとんどの地域がカバーされることになる。

対象となる車両

ガソリン車の場合は欧州排出ガス規制のユーロ4に、ディーゼル車の場合はユーロ6に適合していないと、ULEZで通行料金が発生する。自分の乗る車両が適合しているかどうかは、ロンドン交通局のウェブサイトから確認することができる。

ULEZは1日24時間、1年365日稼働している。自動車、オートバイ、商用車、その他の特殊車両、およびゾーン内に居住している人が対象となる。

重量が3.5トン以上の車両は、LEZ料金が適用されるため、別で支払う必要はない。

1日あたりの料金 渋滞税との兼ね合いは?

ロンドンULEZで発生する料金

ULEZ内では、1日12.50ポンド(約2000円)の料金が発生する。ただし、エリア内に駐車され、一日中運転しない場合は、支払いが免除される。

境界線に沿って設けられたエリア入口には、ULEZに入ることを示す道路標識が設置される。既存の渋滞税標識と並ぶか、その下に置かれることになるだろう。

排出ガス基準に満たない車両からの乗り換えを支援する制度も導入されている。
排出ガス基準に満たない車両からの乗り換えを支援する制度も導入されている。

ULEZ料金は、従来の渋滞税に上乗せされる。渋滞税は、クリスマスを除いて毎日午前7時から午後10時の間に適用され、1日15ポンド(約2400円)を支払わなければならない。

つまり、指定の排出ガス規制に適合していない車両の場合、平日のロンドン市内を通勤通学で移動すると、渋滞税とULEZ料金だけで年間約5760ポンド(約92万5000円)を支払う可能性があるということだ。

ULEZ料金を翌日の夕方までに支払わない場合、車両所有者にペナルティ通知が送られる。

廃車支援制度「スクラップ・スキーム」とは何か?

2023年1月30日より、ロンドン交通局は新しい廃車支援制度(スクラップ・スキーム)を導入した。排出ガス規制に満たないクルマを廃車とするか、規制を満たすように改造するための補助金として、最大5000ポンド(約80万円)を支給するというものだ。

この制度は、低所得者や障害者向け給付金を受給しているドライバーを対象としており、車椅子対応車には最大5000ポンドが支給される。一般車の場合は最大2000ポンド(約32万円)、バイクの場合は廃車に限り最大1000ポンド(約16万円)が支給される。

商用車やミニバスも対象となる。ロンドンに拠点を置く個人事業主、登録慈善団体、零細企業(従業員10人以下)に対しては、5000ポンドから9500ポンド(約152万円)が補助金として支払われる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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