獲物を追うヒョウのような走り アウディeトロンGT 長期テスト(1) 電動グランドツアラーの実力は?

公開 : 2023.05.06 09:45  更新 : 2023.08.03 15:57

ポルシェと技術共有するアウディの高性能EV、eトロン GT。英国編集部が日常使いすることで、その能力を掘り下げます。

初回 早々に2000km以上を走破

初回にも関わらず、アウディeトロンGTのタンゴ・レッドに塗られたボディが汚れていて恐縮だ。通常なら、ピカピカの状態で写真撮影を1度済ませるのだが。

eトロンGTは、これまでの多くのモデルとは異なる。急速にラインナップが拡大される、バッテリーEV(BEV)のフラッグシップの一翼を担っている。ポルシェの技術が投入された、特別なアウディとして多くの出番があった。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

クルマを受け取ってすぐに目指したのは、ロンドンのAUTOCAR本社ではなく、ベルギーのアントワープ。往復740kmを一気に走ることになった。

翌日もヒースロー空港へ2回往復。数日後にはグレートブリテン島の北部、スコットランド・エディンバラにも向かい、さらに約1300kmの距離を重ねている。

ちなみに、筆者のスマートフォンには予めマイアウディというアプリをインストール済み。駆動用バッテリーの充電状況のほか、1日の走行距離も教えてくれるから、このようなレポートには便利だ。

慌ただしい1週間をこなした金曜日、長期テストの原稿の締め切りが今日だと発覚。洗車する余裕もなく、オフィスの近くで撮影を済ませた結果が、汚れた写真というわけ。グランドツアーの途中にも見えなくないが、そんなことはない。

ベルギーへもスコットランドへも、内燃エンジン車を利用することはできた。だが、真新しいアウディのBEVで長距離を走るという、絶好の機会は逃せない。電動グランドツアラーというカテゴリー全体の、評価にもつながると考えた。

BEVに理想的ではないライフスタイル

さて、筆者のライフスタイルは、BEVユーザーとして理想的なものではない。暮らしているアパートは、人通りの多い道に面しており、部屋は最上階にある。もちろん、充電器が玄関口にあるわけではない。

戸建てに住む同僚には、駐車場にAC充電器を設置している人もいるが、筆者にとっては現実的ではない。歩道をまたいで、充電ケーブルを伸ばすわけにもいかない。そもそも、アパートの前には充分な駐車スペースがない。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

BEVを購入する人の条件としては、かなり悪い方だろう。夜間に自宅で充電することができず、従来の内燃エンジン車のように、出先でエネルギー補給することになる。eトロンGTの場合は、充電スタンドで。

しかも、この仕事をしているとクルマで遠くを目指すことが多い。ルーティンも決まっていない。1日500km近く走ることも珍しいとはいえない。

とはいえ、アウディが主張するeトロンGTの長い航続距離と、テスラが提供する急速充電器、スーパーチャージャーを利用できるという事実が、状況を変えると考えている。公称値は484kmだ。

実際のところ、これまで走れた最長は368km。現実はそう甘くなさそうだが、気温が上昇するにつれて数字も伸びるのではないかと期待している。充電スタンドの利用アプリも、5社ぶんをインストールした。当面は足りるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アウディeトロンGTの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

アウディ eトロンGTの人気画像