リア・サスペンションの機能美 アウディeトロン GT 長期テスト(3) 当初の不安は払拭

公開 : 2023.08.19 09:45

ポルシェと技術共有するアウディの高性能EV、eトロン GT。英国編集部が日常使いすることで、その能力を掘り下げます。

積算6970km 街の景色へ溶け込む控えめさ

速いクルマが砂埃で汚れていると、しっかり走り込まれた印象を受けて筆者は嫌いではない。しかし、鳥の糞は別問題。そこでロンドンの北に位置する、手洗い洗車を得意とする専門ショップを訪れてみた。

長期テストアウディeトロン GTは、想像以上に汚れていた様子。驚くほどの艶を取り戻した。帰り道は、アウディA7のように街の景色へ溶け込んだように感じられた。この控えめさが気に入っている。本当は、快音を奏でるR8の方がもっと好きだけれど。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

積算7580km EVへの当初の不安は消え去った

アウディeトロン GTの長期テストが始まってから数か月。バッテリーEVとの暮らしが混乱したものになる、という心配は殆ど消え去っている。筆者は、その事実に驚いている。自宅はアパートで、充電できる環境がないにも関わらず、だからだ。

実際のところ、さほど大変な思いはしていない。筆者のライフスタイルを知っている知人も感心している。彼らは、アレコレ悩むことへ期待していたようだが。他人の不幸は蜜の味というのは、どこの世界でも変わらない。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

この付き合いやすさを生んでいる理由は、eトロン GTが充分な航続距離を備えることと、モニターに表示される予想の航続距離が正確だから。特に、ドライブモードをエフィシエンシーにしている時は、かなりの精度で当初の想定距離を走れる。

リアアクスル側に組まれた2速オートマティックは、ロングなギアに固定され効率を高め、エアスプリングは車高を落とし空気抵抗を小さくする。速度抑止用のスピードバンプを乗り越える時は、フロントスカートをこすりがちになるが、見た目も良くなる。

家族で唯一のクルマとして所有も可能

気温の上昇とともに、航続距離は伸びている。93.4kWhの容量を持つ駆動用バッテリーを100%まで充電すると、現在得られる距離は426kmほど。更に大容量のバッテリーを積むBMW iXには及ばないものの、普段はほぼ困らない数字といえる。

充電ステーションも、最近は利用者が増えつつあるが、長く待たずに利用は可能。ただし、急速充電能力を発揮させるほど高速な充電器は殆どない。利用料金が1kWh当たり0.65ポンド(約118円)と安くはないから、あえて選びたいとも思わない。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

大抵の場合、充電ステーションに到着してから5分以内に充電を始められ、20分後には再出発できる。不便さを感じないで済む待ち時間といっていい。

家族で唯一のクルマとして、eトロン GTを所有できるだろうか。今までの経験での答えは、ほぼイエス。

だが、eトロン GTをメインのクルマとして乗りつつ、ガソリンで走るコンパクトカーもセカンドカーとして所有する、というのがベストなソリューションかもしれない。長距離ドライブの翌日、駆動用バッテリーの残量が乏しい場面で、きっと役に立つ。

英国では、2008年式のフォードフィエスタなどが、バックアップ車両として最適だろう。eトロン GTのオプションをいくつか諦めれば、所有できる価格帯で売られている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アウディeトロンGTの前後関係

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