「普通の美意識」は通用せず? アストン マーティン・ラゴンダ ブリストル412 ロールス・ロイス・カマルグ(2)

公開 : 2023.12.31 17:46

ブランド支持者から批判的に評価された3台 他に紛れない明確な個性を持つ容姿と走り 再評価すべき1970年代のクラシックを、英国編集部がご紹介

ウィリアム・タウンズ氏による鮮烈な容姿

アストン マーティン・ラゴンダは、1987年にシリーズ4へマイナーチェンジ。デザイナーのウィリアム・タウンズ氏がボディへ手を加え、1990年1月まで生産は続いた。

ただし、シリーズ4のスタイリングは、本人が意図したものとは違っていたと噂されている。生産へ向けた製図の段階で、誤認されたとか。

ダーク・グリーンのアストン マーティン・ラゴンダと、シルバー・グレーのブリストル412、ダーク・ブルーのロールス・ロイス・カマルグ
ダーク・グリーンのアストン マーティン・ラゴンダと、シルバー・グレーのブリストル412、ダーク・ブルーのロールス・ロイス・カマルグ

シリーズ3からの変更点は、塗装されたフロントグリル・フレームやサイドシルに、新しいデザインのフロントスポイラーとホイールなど。ヘッドライトはリトラクタブル式から、スリムな固定式の6灯へ変更。テールライトも細身だ。

フェンダーのラインは丸みを帯び、ボディサイドのキャラクターラインは消されている。それでも、鮮烈な印象なことに変わりはない。ラゴンダ・シリーズ4は、105台がラインオフした。

久しぶりに実写を目の当たりにすると、若かった頃に受けた衝撃が蘇る。直線的なボディは、遠近感で一層大きく見える。全長は5283mmある。

他方、ブリストルで物議を醸したスタイリングをまとっていたのが412。イタリアの個性的なカロッツエリア、ザガート社と手を組み、フラットなボンネットに小さなウインドウ、柱のようなロールケージが与えられ、建築的な姿に仕立てられている。

今回ご登場願った412は、1977年式のシリーズ2。2007年から1年をかけて、ブリストル・カーズのクラシック・レストア部門でアップグレードを受けたという。

不格好に思える真正面 滑らかなマナー

アルミホイールは、オリジナルのエイボン社製より大きいコンポモーティブ社製。ホイールアーチを、ファットなタイヤが埋める。状態は素晴らしいが、印象へ大きな影響を与えている。

412で最も不格好に思えるのは、真正面からだろう。ライトが小さすぎ、大きく背の高いボンネットに押しつぶされたよう。路上を走らせると、箱型のボディが動きを強調して見せる。

ブリストル412(1975〜1982年/英国仕様)
ブリストル412(1975〜1982年/英国仕様)

コンバーチブルの412は、当時のブリストル・カーズのオーナー、トニー・クルック氏の要望で作られた。同社のAフレーム・シャシーをベースとし、シリーズ1では6.5Lのクライスラー社製V8エンジンに3速ATを搭載。以前のモデル、402や405の流れを汲む。

1978年のシリーズ2では、V8エンジンは5.9Lへ交代。ルーフの防水性や、ロールオーバー・バーの剛性が高められた。フロントグリルのエンブレムやバンパー、リアシートのヘッドレストなど、細かな改良も受け、1986年まで生産は続いた。

412 コンバーチブルの内装には、ウッドパネルとレザーがふんだんに用いられ、いかにもブリストル。全幅は1765mmと、この3台の中では細身で、段差を超えても身震いすることはない。ツーピースのルーフを取り外すと、ヘッドルームは無限に広がる。

最高出力は350ps。滑らかに仕事をこなすATと相まって、たくましい走りを叶えている。リジッドアクスルは横方向の安定性が高く、乗り心地も良好。滑らかなマナーで、地平線の先まで走ることも難しくない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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