フェラーリ vs アストン マーティン ドライバーズSUV頂上対決 プロサングエはDBX707を超えるか(1)

公開 : 2023.12.09 09:45

フェラーリの大胆な1歩となったプロサングエ 走りでクラスをリードするアストンのDBX707 英国編集部が一般道でスーパーSUVを直接比較

無視できないほど成長した高性能SUV市場

グレートブリテン島北部、スコットランドの風光明媚なドライブルートへ1歩を踏み出す。アストン マーティンフェラーリの「SUV」による直接対決など、数年前までは誰も想像し得なかった。

この戦いは、少し一方的なものになりそうだが、2倍近い価格差を知れば納得もできる。安価な方でも、筆者には現実離れした金額ではあるけれど。

レッドのフェラーリ・プロサングエと、グリーンのアストン マーティンDBX707
レッドのフェラーリ・プロサングエと、グリーンのアストン マーティンDBX707

お借りしたフェラーリ・プロサングエは、約41万1000ポンド(約7603万円)に達していた。それでも、3年分の注文が寄せられているという。株主の懐を暖めることは間違いないが、技術者の血の滲むような努力の賜物であることも明らかだ。

フェラーリには、稀に自らの優位性を証明しなければならない場面がやってくる。1994年には、V8エンジンをミドシップした348に対し、初代ホンダNSXが台頭した。それに応戦するため、F355が導き出された。

だが今回は、特定の脅威にさらされたわけではない。高性能SUVの市場が、フェラーリも無視できないほど成長したのだ。ビジネスとして、プロサングエが必要になったといえる。シリアスな姿勢を貫き続ける、マラネロ渾身のSUVが生まれた。

一切の手抜きはない。パワートレインは、ローマが搭載する3.9L V8ツインターボではなく、812スーパーファストと同じ自然吸気の6.5L V型12気筒。

若干デチューンされているものの、最高出力は725psもある。V12エンジンの搭載が発表されると、プロサングエに対する関心は急激に高まったらしい。

他のSUVと一線を画すスタイリングの美しさ

豊満なパワーを伝えるのは、8速デュアルクラッチATの他に、フロント側にも2速ATが組まれる四輪駆動システム。大きなエンジンはシャシーの低い位置へ押し込まれ、前後の重量配分は49:51で理想値といえる。偶然にも、812スーパーファストと同値だ。

対峙するアストン マーティンDBX707は、54:46。ランボルギーニウルスポルシェカイエン・ターボGTは57:43。多くの高性能SUVへ紛れない、血統の違いが表れている。

フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)
フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)

ボディのねじり剛性は、実質的な先代モデル、GTC4 ルッソより30%も高い。アルミニウム製プラットフォームを基礎骨格とし、比較的低いルーフラインを備えつつ、電気的に制御される観音開きのサイドドアで、リアシートへのアクセスは悪くない。

スタイリングの美しさも、他のSUVと一線を画す。リアへ向けて上昇するウエストラインと、ふくよかに膨らんだリアフェンダー。ほのかにクラシカルな香りを漂わせつつ、フレッシュさに溢れている。

空力特性も磨かれている。フロントフェンダーには、F12 ベルリネッタでも採用された、エアロブリッジが与えられた。プロサングエでは、ダウンフォースを生み出すというより、ホイールアーチ内の圧力を逃し抵抗を減らす役割があるそうだ。

リアのホイールアーチ部分にも同様の処理がある。テールランプの下に、目立たないエアアウトレットが切られている。DBX707の巨大なディフューザーを、大げさに見せてしまうような、スマートな処理ではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ vs アストン マーティン プロサングエはDBX707を超えるかの前後関係

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