ポルシェ356は1955年式から1956年式でエンジンが変わります
佐藤自動車工業所の佐藤です。
1954年11月からの1955年式エンジンは、3分割(3ピース)クランクケースに変更されました。
この3分割初期型エンジンは1300cc版では継続しますが、1500cc版ではたった1年だけでした。
まだまだプリAの香りが強い時代のエンジンです。
プーリー、オイルフィルター、エンジンカバーなどは、2分割のプリAから変化しています。

1955年10月から生産された1956年式から、356はAタイプにモデルチェンジしました。
エンジンは1600ccとなり、新型616タイプのクランクケースに変更されました。
馬力もノーマル、スーパーともに5馬力ずつ、ちょびっと上がります。
1500cc版は55HP、1600cc版は60HP、スーパーも70HPから75HPになりました。
ところが、実はこの時代の616エンジンは「中身は一緒」だったのです。
クランクケースも1955年式と一緒で、形式だけ616なんですよ、内緒ですけど…
キャブレターは、同じシングルバレルのソレックスですから、馬力アップは排気量の拡大によるものです。
ピストンの直径を1500ccの80mmから82.5mmにして、ほんのわずか2.5mm大きくするだけで1600ccになります。
こういう「ささいな変化」で耐久性が悪くなることに、当時のポルシェ社は神経を遣っていたと思われます。

上の写真は1956年式1600ccノーマルのエンジンです。
オイル漏れの多かった燃料ポンプがAタイプ用に変更され、馬力アップにも対処。
ついにコイルがまっすぐ下向きに付きます。でも皆さんの356には斜め用の穴が残っていますよ。
燃料パイプの形状がその後のAとは違い、オイルスイッチの取り付け方も違います。
ディストリビューターとプラグコードの配線もこの年から違い、新型!です
初めてトライする時にはとても慎重にモデルチェンジをしていたと思います。
それほど慎重にトライを重ねてきましたが、やはり空冷で馬力を出していくのは難しいようです。
この先、Aタイプはエンジンの改良を、「毎年」続けていきます。
1959年でエンジン改良はほぼ終わりますが、まだまだ苦労は始まったばかりでした。
古い年式、特に1953年から1957年のエンジンは、市場に少なくて探すのが困難です。
そのわけは、生産台数も少ないのですが、「壊れちゃったから」という一因も忘れないでください。
1957年までのオリジナルエンジンは、今ではとても貴重なのです。
佐藤自動車工業所
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