インフィニティ・エマージ

公開 : 2012.03.07 11:42  更新 : 2017.06.01 00:54

インフィニティのチーフはエマージ・ベースのEVスポーツカーを作成することは「可能だ」といった。

ジュネーブ・モーターショーで明らからになったエマージは、2つのモーターによって絞りだす402bhpのパワーを持つスポーツカーだ。

エマージで最もチャレンジングだったのはカーボンファイバーによるボディだ。プロダクション・プランニングのボス、フランソワ・バンコンは「本当にカーボンファイバー以外は難しいことはなかった。従って、われわれはカーボンファイバー・ボディを制作する高度なパートナーが必要だ。」と言う。彼はエマージのコストはおおよそ150,000ドル(1,200万円)ほどになると想定している。

英国に拠点を置く日産ヨーロピアン・テクニカル・センターの副社長、ジェリー・ハードキャッスルは、このコンセプトカーの話題が最初にあがったときには、フランソワ・バンコンと緊張した会話があったと言った。

「われわれは、フランソワから挑戦的なパフォーマンスを目標とするクルマの話を聞いた」とハードキャッスルは思い出す。「こんな電話があったことを想像してほしい。’ジェリー、0-100km/h4秒、最高速210kmの電気自動車が欲しい。純粋に電気だけで50km走ることが可能で、エンジンの補助があれば500km走るクルマだ’。彼に訪ねた。V6ターボの4輪駆動車じゃ駄目なのかって。」

しかしバンコンとインフィニティのチームは頑固だった。そして、ハードキャッスルはエマージの製作にとりかかったというわけだ。

今日、明らかになったエマージは、インフィニティに求められるスポーツカーの豪華なパフォーマンスと、ゼロ・エミッション・ドライブを融合しようとしたモデルだ。

後部に搭載される2つのモーターは300kW(402bhp)を発生し、単独で50kmの距離を走ることができる。これにロータスから派生した1.2リッター3気筒エンジンが加えると500kmを走ることが可能だ。

「エマージで、われわれは持続性が、パフォーマンスやドライビング・プレジャーと矛盾しないことを証明したかった」とバンコン。「われわれが造り上げたのは、2シーター・ミドシップのエクスクルーシブなクルマで、それはわれわれにとって新しいクルマだった。エマージは、クリーンだけでなく、エキサイティングなことも証明したかった。電気単独で都市部を走ることもできる。われわれが”静かなパワー”と呼ぶノイズのない莫大なパワーがそれを可能にする。」

エマージは、上級副社長、中村史郎氏が提唱する「あでやか」というデザイン言語によって造られたインフィニティ・コンセプト3部作の3番目にあたる。一つ目は2009年のジュネーブで登場した600bhpのエッセンス・クーペ、そしてもう一つは2011年のジュネーブで発表されたエセレアだ。

ハードキャッスルと彼のチームは、3つのチャレンジを行った。

第一は、電気モーターとその補助的な役割のエンジンの冷却について熟考すること。第二は、既に決められたエクステリア・デザインに対して、インフィニティの標準といえる豪華さを採り入れること。そして第三は、巨大なパノラミック・ルーフと贅沢なキャビンだ。

「われわれは快適なインテリアが欲しかった。ミドシップ・スポーツの場合、馬鹿げたシートポジションを強いられることもある。しかり、これは一般道で使われるクルマで、レーストラックを走るクルマではない。そんなクルマを誰が買うのだろうか。」

それでは誰が生産型のエマージを買うのだろうか。

バンコンは「リスク受取人」とか「反逆的な」という言葉をこのクルマの顧客に使う。少なくとも150,000ドル(1,200万円)の価格が必要となる。彼は潜在的な市場としては、ヨーロッパが主で、アメリカと中国が続くだろうと読んでいる。

「顧客となるのは、既にエキサイティングなスポーツカーを持つオーナーになるだろう」とバンコン。「典型的なのは、ポルシェパナメーラを持ち、更に何か面白みを求めてエマージを買うような人かもしれない。この種のクルマであっても、都市部ではクリーンであるということが愉しみのひとつとして捉えられてもいいのではと思う。150,000ドルの2シーター市場は、50,000台から60,000台ぐらいだろう。だから、3,000台とか4,000台という目標は立てないと思う。もちろん、少ない数で儲けなければならないが、その数が少ないからといって利益と結びつかないとは言えない。」

バンコンはエマージをプロダクション・モデルに加えるのだと、頑固に言う。

「われわれは最初あまり真剣にそのことを考えていなかった。しかし、このクルマを造らなければならないとなれば、ヨーロッパがその工場となるだろう。われわれが使用してるカーボンファイバー・ボディを制作するパートナーを探さなければならない。それは、ピニンファリーナかロータスか、その他のメーカーかだ。」

「生産に入るとなると、われわれはモーターを供給する正しいパートナーを探す必要もある。100kW以上のモーターを望むとなると、コスト面での問題も出てくるからだ。しかし、われわれはその問題を解決するモーターがあることも知っている。」

「インフィニティがそうでなくてはならないが、これからはゼロ・エミッションとアグレッシブなパフォーマンスとの融合が必要だ。もちろん、これはインフィニティだけの課題ではなくて、すべての高級メーカーにいえることだが」とバンコンは語った。

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