レンジローバーのV8を「3モーター」に交換! 感動モノの速さと洗練性 JIAチーフテン EVへ試乗

公開 : 2024.03.03 19:05

レストモッドのプロが、クラシックレンジをEV化 1台の製作に4000時間以上 トリプルモーターで410ps 航続距離は最長402km 英国編集部が評価

1台に4000時間以上を費やし電動化

世界には、バッテリーEVのレンジローバーを待ち望んでいる人が大勢いる。既に1万6000名を超える希望者が、発表予定の新モデルへ手付け金を支払ったとか。確かに、類まれな豪華さとゼロエミッションを組み合わせた大型SUVは、魅力的かもしれない。

ファッショナブルなエレクトロモッド(電動化)・モデルなら、さらに訴求力は高いと感じるクルマ好きがいるかもしれない。そう考えたのが、グレートブリテン島の南部、オックスフォードシャー州に拠点を置くJIA社だ。

JIAチーフテン・レンジローバー EV(英国仕様)
JIAチーフテン・レンジローバー EV(英国仕様)

規模の小さな同社はレストモッドを得意とし、見事な完成度のジェンセン・インターセプター FFで名声を掴んだ。その後、クラシック・レンジローバーのフロントへ、シボレーのV8エンジンを押し込んだチーフテンを開発。知る人ぞ知る存在になっている。

彼らが最近発表したのが、そのバッテリーEV版。今回試乗した、チーフテン・レンジローバー EVだ。

クルマへ詳しくない方でも想像できると思うが、クラシックレンジを電気の力だけで走れるようにする仕事は、簡単なものではない。JIA社は、丁寧なレストア作業を含めて、1台に合計4000時間以上が費やされると主張する。

ステアリングホイールを握らせていただいた、ペール・グレーの試乗車は、その手間ひまを実感させるものだった。エンジニアのスペン・キング氏が主導した造形美はそのままだが、細部までしっかりアップデートされている。

トリプルモーターで410ps 航続距離は最長402km

ボディパネルの隙間はピタリと揃い、塗装の艶は深い。黒光りするアルミホイールの奥には、APレーシング社製の巨大なディスクブレーキが輝く。バンパーの中央には、バッテリーEVであることを示す、グリーンの帯のナンバープレートがぶら下がる。

セパレートボディの下側には、オリジナルのラダーフレームとリジットアクスルが残されている。だが、それ以外はほぼすべて新しい。3.9L V8ガソリンエンジンと4速オートマティックは、もちろん降ろされた。

JIAチーフテン・レンジローバー EV(英国仕様)
JIAチーフテン・レンジローバー EV(英国仕様)

チーフテン EVを動かすのは、3基の駆動用モーター。英国のヤサ社製アキシャルフラックス・タイプで、フロントアクスルを1基が、リアアクスルを2基が受け持つ。

同社によると、システム総合での最高出力は657psに達するそうだが、扱いやすさを考慮し、410psへ制限しているという。前後のトルク割合は、40:60に設定されている。

駆動用バッテリーの容量は、120kWhと巨大。中国のCATL社製ユニットで、ボンネット内と荷室のフロア下に分割され載っている。

主張される航続距離は、354kmから402kmと充分。急速充電能力は90kWまで対応し、最短75分で満充電になる。採用される電動パワートレインはすべて既製品だそうだが、廃車になったテスラからの流用ではないという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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