見た目は旧式 中身は最新! EVなら悪路が簡単になる MWモーターズ・スパルタンへ試乗 

公開 : 2024.02.20 19:05

チェコ生まれの電動オフローダー、スパルタン ベース車両は旧ソ連のUAZハンター 内装はオリジナルから一新 静かに悪路を進む 英国編集部が試作車へ試乗

ベース車両は旧ソ連のUAZハンター

バッテリーEVの時代を迎え、新しい自動車メーカーが次々と誕生している。欧州でも。ある日突然、ニューモデルが告知され、CEOのインタビューが報道される。ところがその後、音沙汰がなくなることも珍しくない。

チェコのMWモーターズは、違うようだ。プレスリリース前に技術開発を終えており、筆者は試作車への試乗が許された。

MWモーターズ・スパルタン EV2.0(欧州仕様)
MWモーターズ・スパルタン EV2.0(欧州仕様)

MWモーターズの設立は、2017年。MWは、アイルランドの物流業界で成功を掴んだ、モーリス・ウォード氏のイニシャルだという。環境保護に関心を寄せる彼が、独自のバッテリーEVを作ろうというアイデアを牽引している。

ただし、シャシーとボディの設計は非現実的だとも認識していた。実績があり安価なベース車両が探され、ウォードのお眼鏡に適ったのが、1971年に旧ソ連で生産が始まった四輪駆動車。UAZ(ワズ) 469、別名ハンターだった。

MWモーターズの技術者は、古いエンジンとトランスミッションを降ろし、独自の電動パワートレインと四輪駆動システムへ置換。制御用ソフトウエアを実装し、スパルタン EV2.0が誕生した。

この開発へ至った理由を、ゼネラルマネージャーのルカシュ・メテルカ氏へ尋ねる。「ニッチ市場の存在を理解していました。規模は数千台で、大手の自動車メーカーには小さすぎますが、われわれのようなメーカーには充分です」

「電動の四輪駆動車は、現在ほぼ選択肢がありません。EUでは、2035年から内燃エンジン車が販売できなくなります。開拓者になることで、アドバンテージを得られると考えました」

新しくない見た目の、最新電動オフローダー

実際、多くの企業は環境意識を高めている。理想的なモデルが登場すれば、多くの支持を集めることは想像に難くない。

「スパルタン EV2.0には賛否両論ありますが、自分は気に入っています」。と話すのは、英国で自然保護区の管理者を務めるブラッドリー・ブラウン氏だ。

MWモーターズ・スパルタン EV2.0(欧州仕様)
MWモーターズ・スパルタン EV2.0(欧州仕様)

豊かな自然が広がるイングランドの保護区では、チェーンソーなどを携えて奥地へ立ち入る機会が珍しくない。彼のグループは、ランドローバーディフェンダーの代わりとして、現場で能力を1年半も検証してきた。

「かなり良いクルマです。特に、余裕ある最低地上高が良いですね。荷物を積んだ、トレーラーの牽引も簡単。最近になって、オールテレーンタイヤへ履き替えましたが、走りに大きな違いが生まれましたよ」

「航続距離は257kmと不満なし。ヒーターなどを使っても問題ありません。活動拠点の殆どが、12km前後の場所にあるため、1週間に1度も充電すればまかなえます」

エンジン・チェーンソーと、電動チェーンソーとの違いへ近いと、ブラウンは付け加える。能力で多少劣っても、9割の作業はむしろ簡単で快適。利用時は、環境への負荷も小さい。

ブラウンが、スパルタン EV2.0でぬかるんだ林間へ入っていく。新しくない見た目の、最新電動オフローダーが、泥と落ち葉が堆積した地面を進む。唯一の課題は、両足でブレーキペダルを踏む必要があったことだという。回生ブレーキも弱すぎたそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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