【トリノ・デザインのSタイプ】フルア・ジャガーSタイプ 1台限りのコーチビルド・クーペ 後編

公開 : 2020.12.13 16:50

イタリア・トリノのコーチビルダー、フルア社。マセラティを得意とする工房が、ジャガーSタイプがベースの落ち着いたクーペを1966年に生み出しました。丁寧なレストアが施され、変わらぬ美しさをたたえる1台をご紹介しましょう。

もくじ

ダッシュボードはジャガーSタイプそのまま
明るく風通しが良く、心地いい車内
Sタイプの長所を受け継ぐフルア
番外編:トリノに出展されたもう1台のクーペ

ダッシュボードはジャガーSタイプそのまま

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
フルアSタイプは約10万ポンドを投じたレストアを終えると、カーコレクターの ジュリアン・サムナーとピーター・ハートネットが購入。ここ20年ほど、大切に乗っている。

ピエトロ・フルアによるデザインは、エキゾチック。でも車内に座りダッシュボードを眺めると、ジャガーが起源であることがわかる。基本的にはSタイプそのままの流用だが、過去のレストアでツヤツヤのウッドパネルに張り替えてある。

フルア・ジャガーSタイプ・クーペ(1966年)
フルア・ジャガーSタイプ・クーペ(1966年)

長いテールのおかげで、サルーンより荷室は大きく使いやすい。ボンネットはフロントヒンジ。

持ち上げるとXK由来のツインカム直列6気筒ユニットが潜んでいる。オリジナルのジャガーSタイプより、エンジンの整備性は良さそうだ。エアクリーナー・ボックスは、低められたノーズラインに合わせて、特別に作り直されたものが付く。

エンジンルームにはまだ余裕があり、トリプル・SUキャブも載るかもしれない。ジャガーEタイプのように。

ヒーターボックスが大きく見える。フロントガラス手前には、キャビンの換気を助ける大きなエアベントが口を開く。ガラスの面積が大きいから、夏場の日差しなら車内はかなり暑くなるだろう。

レザー張りのドアパネルは、間違いなく特注。でも、エアコンとパワーウィンドウは付いていない。高価なクルマのはずなのだが。

スイスで過ごしている間に、ジャンプするジャガーのマスコットはボンネットから取り外され、JAGUARと記されたアルミ製のプレートが貼られたらしい。ドアハンドルは、当時もののローバー製のようだ。

明るく風通しが良く、心地いい車内

アームチェアのような、大きなレザー張りのフロントシートに腰を降ろす。アルファ・ロメオ2600スプリントのもだというが、はっきりわからないという。筆者には、マセラティのシートに思える。

トラディショナルなジャガーのダッシュボードに、ウッドリムの3スポーク・ステアリングホイールが組み合わされている。視覚的にはよくマッチしている。オリジナルのSタイプとは異なり、ダッシュボードのパネルはフロントガラスの幅より短い。

フルア・ジャガーSタイプ・クーペ(1966年)
フルア・ジャガーSタイプ・クーペ(1966年)

このステアリングホイールも、マセラティのものだと思う。4ドアサルーン並みにリアシートは広々している。明るく開放的な雰囲気で、心地いい。

以前のオーナーは、サウンドシステムに凝った時期があった。クラシカルなプッシュボタンの付いたラジオはダミー。その裏側には、鼓膜を打ち破るほどの音圧を放つ、強力なサウンドシステムが隠れている。

両サイドに軸があるメルセデス風のワイパーは、ジャガーには珍しい。リアフェンダーには、上方に開くフューエルリッドが切られている。リッドが邪魔で、給油作業は通常のSタイプより必要以上に難しい。

筆者はジャガーSタイプが好きだ。フルシンクロのマニュアル・トランスミッションとパワーステアリングが付いている。当時のイタリア人は、ATを好まなかった。このフルアSタイプは、状態も走りも、かなり好感触といえる。

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