ロールス・ロイス・エンジンで対抗 ヴァンデンプラ 4リッターR ジャガーSタイプ 3.4 最高峰のサルーン 前編

公開 : 2023.02.18 07:05

ジャガーが有能なSタイプを発売すると、BMCはロールス・ロイスのエンジンで対抗。往年のビッグサルーンを英国編集部がご紹介します。

世界最高峰のサルーンを生み出すジャガー

リソースに恵まれていたジャガーは、1960年代には希望通りのサルーンを生み出すことが可能だった。類まれな逸品を仕立てることも、食材とシェフに恵まれたレストランのように難しくはなかったようだ。

ジャガーMk2や420、MkXに至るまで、採用されていたエンジンやトランスミッション、スタイリングは、当時は世界最高峰の内容といっても過言ではなかった。他の自動車メーカーへ、影響を与えるのに充分といえた。

ダークグリーンのジャガーSタイプ 3.4と、ブラックとグレーのツートーンのヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR
ダークグリーンのジャガーSタイプ 3.4と、ブラックとグレーのツートーンのヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR

特にコストパフォーマンスで長けていたのが、大排気量エンジンを搭載していたMk2だろう。さらにそれをベースに、1963年から1968年にかけて展開されたSタイプは、圧倒的な完成度を誇ったことは間違いない。

グレートブリテン島の中部、コベントリー・ブラウンズレーンで働く技術者は、当然のことのように高い水準を達成した。その頃のジャガーらしく。

美しいサルーンボディを形作り、シャシーには最新技術といえた独立懸架式のリア・サスペンションを採用。ダンパーは片側に2本組まれていた。インテリアには、高級な素材と見事な装飾が選びぬかれて投入された。

フラッグシップ・モデルとして君臨していたMkXに迫る豪華さと、スポーティでコンパクトなMk2に劣らない走行性能や乗り心地を両立。Sタイプは、1960年代で同社最高のサルーンとして評価できる。筆者の意見では、XJ6登場以前のベストだ。

ロールス・ロイス・エンジンのプリンセス

3.4Lか3.8Lの直列6気筒エンジンが選べたSタイプは、約2万5000台が製造されている。1961年以降の英国では、2000ポンド以下の社用車に減税措置が取られていたこともあり、少なくない購買層が存在していた。

一方で、ヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターRが登場したきっかけも、その優遇措置にあった。1964年の発売時の英国価格が、1994ポンドという戦略的な設定だったことからも明らかだ。

ヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR(1964〜1968年/英国仕様)
ヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR(1964〜1968年/英国仕様)

Sタイプへの対抗として、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)によって画策されたのが、プリンセス 3リッターの進化版となる4リッターR。エンジンは、アルミニウム製のロールス・ロイスFB60型、直列6気筒ユニットが載っている。

全長4775mmあるボディは、従来より剛性を向上。前後のガラスの角度を起こし、リアシートを後ろ寄りにレイアウトすることで、ゆとりある車内空間を実現させていた。

ホイールサイズは、13インチと当時としても小径だった。タイヤを肉厚にし、スプリングレートを落とすことで、柔らかい乗り心地が狙われていた。リア・サスペンションは、リーフスプリングにリジットアクスルという組み合わせだが。

BMC自慢の高級ブランド、ヴァンデンプラのモデルとして、プリンセス 4リッターRの仕上がりはほぼ完璧といえた。それ以前の3リッターは毎週100台も売れていたため、好調なセールスが期待されていた。経営陣は、失敗を想像できなかっただろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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