ネオクラV8サルーン BMW M5 メルセデスE 55 AMG ジャガーSタイプ R マセラティ・クアトロポルテ 4台比較 中編

公開 : 2022.12.11 07:06

ミレニアム時代に各社から出揃ったV8エンジンの高性能サルーン。英国編集部が4台ヘ試乗し、各個性を振り返りました。

現代でもモダンでエキゾチックな見た目

SタイプにRを設定したジャガーとは異なり、イタリアのマセラティにはシリアスなサルーンというイメージが薄いだろう。4ドアのクアトロポルテは、独自の優雅さという個性で売っていた。

4代目が登場したのは1994年。1981年のビトルボをベースにした3代目へお別れを告げ、1992年のギブリと同じ2.8L V6ツインターボ・エンジンを搭載していた。

マセラティ・クアトロポルテ IVとメルセデス・ベンツ E55 AMG(W210)
マセラティ・クアトロポルテ IVとメルセデス・ベンツ E55 AMG(W210)

端正なスタイリングを手掛けたのは、巨匠マルチェロ・ガンディーニ氏。クアトロポルテの登場は今回の4台では1番古いが、現代でもモダンでエキゾチックな雰囲気を放っている。

クアトロポルテの誕生当初、マセラティの経営権はフィアットが握っていたが、1997年にフェラーリへ移管。工場の生産体制が改められ、800点の主要部品のうち400点へ改良が施された。

その結果誕生したのが、3.2エボルツィオーネ。スポーツサルーンに磨きをかけ、270km/hの最高速度を実現させている。

トランスミッションは、ゲトラグ社製の6速マニュアル。リアのチューブラー・フレーム構造には、トレーリングアーム式サスペンションと、リミテッドスリップ・デフが取り付けられている。

エンジンは、技術者のジュリオ・アルフィエーリ氏がF1用に設計した32バルブのV8。それをベースに、IHI社製のターボチャージャーが2基組まれた。

最高出力は334ps、最大トルクは45.8kg-mと、ライバルを脅かすほどではなかった。それでも、マセラティの魔法が掛けられフィーリングには威圧感が漂う。0-97km/h加速は5.8秒を実現した。

4ドアの5シーターだと忘れる走りのM5

今回の4台が1つの駐車場に並ぶと、BMW M5の存在感がひときわ大きく感じられる。それは公道でも同じで、相応に意欲的に走る姿を想像ぜずにはいられない。

E39型M5のインテリアは、当時のドイツの工業製品らしいデザイン。多くのボタンが整然と並び、丁寧に1つ1つへ機能が記されている。ライトのロータリースイッチは、メーターと呼応するようにレイアウトしてある。

BMW M5(E39/1998〜2003年/英国仕様)
BMW M5(E39/1998〜2003年/英国仕様)

今回ご登場願ったM5には、ヘリテージと呼ばれるレザーシートが装備され、上質感を高めている。サイドボルスターが立ち上がり、身体は完璧なドライビングポジションに落ち着く。

日常的な速度域では、M5は静かで大人しい。2段ギアを落とし右足へ力を込めれば、V8エンジンが文化的な響きを奏でつつ、路面を蹴りながら猛進し始める。

サウンドには厚みがあるが、メルセデス・ベンツE 55 AMG程のマッスル感はない。高回転域へ迫るほど、レーシングカーのように甲高く変化していく。

スポーツモード・ボタンを押すと、ステアリングアシストが小さくなり、ストロークの長いアクセルペダルの反応が引き締まる。リニアに生成されるパワーは扱いやすく、6速MTのレバーはキビキビと操れる。筆者の背中がシートに押し付けられる。

コーナーへの侵入は、スポーツカーのようにキレキレ。感心するほどフラットで、反応は自然。連続するコーナーを流暢にこなし、一気に加速していく。4ドアの5シーターで、大きな荷室を備えた5シリーズだということを忘れてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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