日産エクストレイル 20X

公開 : 2014.03.03 20:00  更新 : 2021.04.22 13:28

■どんなクルマ?

2013年12月より日本市場での発売がスタートした、日産のミドルクラスSUV。日本国内だけでなく欧州や北米市場でも販売される世界戦略車であり、そのため世界初披露は2013年秋にドイツで行われたフランクフルト・モーターショーとなった。

いまや日産のSUVラインナップにおいて中核を担う、エクストレイルの初代モデルが登場したのは2000年のこと。シンプルでスクエアなスタイリングや、ラゲッジボードに撥水性の強い素材を使用するなど、スノーボードをはじめとするスポーツカルチャーと親和性を高めた装備で人気を集めた。

この初代モデルは7年というロングセラーとなり、2007年にキープコンセプトの二代目モデルへとフルモデルチェンジ。そして今回の三代目では、より都会的な印象を感じさせる外観デザインや3列シート7人乗り仕様も設定されるなど、本格派SUVとしての走行性能に加えてユーティリティ性を兼ね備えた、クロスオーバー的なモデルへと進化している。

搭載されるエンジンは2リッター直噴DOHC4気筒で、トランスミッションはCVTが組み合わされる。駆動方式はパートタイム式4WDのほか、FFモデルも設定。なお先代モデルに用意されたクリーンディーゼル搭載車は設定がなく、しばらくのあいだ先代モデルが継続販売されるようだ。

■どんな感じ?

数あるグレードのなかから今回試乗したのは、もっとも多い販売台数を記録している20X”エマージェンシーパッケージ”の4WDモデル。2列シート5人乗員の仕様だ。

実車を前にまず思うのは、大きくなったなぁ……ということ。車内に3列のシートとラゲッジルームを確保しなければいけないので、外寸が拡大するのは仕方ないにしても全長4640×全幅1820×全高1715mmというボディサイズはやはり質量を感じるし、数値以上に大きく見える。なお車両重量は1500kgと、外観からイメージするほど増大していないのは好印象だ。

ボディの大きさを感じさせるのは、先代までと変わって曲線基調のスタイリングとなった影響もあるだろう。この三代目エクストレイルは『ローグ』の名称で北米市場にも投入されることは前述のとおりだが、その北米市場で販売台数を伸ばすために求められるのは、本格派SUVよりも都市部やその近郊で使い勝手のよいクロスオーバー。スタイリングは伸びやかさを増し、使い倒してこそSUVというイメージは影をひそめた。

いっぽうで室内空間の質感向上はめざましい。大柄なシートやアームレストは狙っている市場を連想させるものだが、豊富に用意された小物入れやドリンクホルダー、ダイヤル式駆動切り替えスイッチの操作感など、実際に使う装備の質感が高い。ウッドパネルやベージュレーザーをふんだんに使う……といった、視覚的に華美な仕上がりではないけれど、「頼れる道具」というエクトレイル本来の魅力で勝負しているあたりは、開発者の良心を感じさせる部分だ。

2ℓの直噴DOHCユニットは、先代モデルに比べて最高出力が10ps、最大トルクは0.7kg-mのアップとなった。全域で力強さを感じるだけでなく、JC08モード燃費もリッター16.0キロとなり、36%もの性能向上を達成。全車に75%エコカー減税が適用されるなど、財布に優しいところも魅力的だ。

都市部や高速道路を試乗するかぎり、そのドライブフィールは穏やかでミニバン的に大人数が乗って移動するというシチュエーションにもたっぷり対応してくれるもの。スポーク径の太いステアリングにSUVらしさを感じさせるものの、パワーアシストの効いた操舵感は自然で、軽い。CVTとの組み合わせも軽やかで、サイズを考えれば軽量に仕立てられたボディのおかげもあり、ストップ&ゴーの多い都市部でもストレスなく走ることができた。

■「買い」か?

注目の7人乗り仕様に乗ることはできなかったが、5人乗り仕様ならではの広大な足元空間やラゲッジルームは非常に魅力的。キズがつきにくく、また水分が落ちてもサッと拭き取れるシート生地やフロアなど、エクストレイルの美点は変わらず受け継がれている点も素晴らしい。

しかし軽やかに都市部や高速道路を走りぬける新型エクストレイルの走りっぷりは、従来のSUVらしさを求めるオーナーには物足りなさを感じるかもしれない。太めのステアリングで大柄な車体を操ってはしるうち、常になにか違和感を覚えるのはCVTのセッティングによるものだろう。あまりにも乗用車的なのだ。

もっともそれこそが開発のテーマであり狙い通りなのだろうが、自然かつ軽やかに速度を乗せ、ワインディングでもそれほどロールを感じず走り抜けて行く姿に、いわゆる大陸的なSUVの乗り味は存在しない。ひとまわり大きくなったボディに、ジュークやデュアリスのような小型SUVの軽快さが与えられた新型エクストレイル。これを「進化」と捉えるかどうか、それはユーザーの使用用途によって議論が分かれそうだ。

(文・佐橋健太郎 写真・松川 忍)

日産エクストレイル 20X “エマージェンシーブレーキパッケージ”4WD

価格 2,527,350円
燃費 16.0km/ℓ
乾燥重量 1500kg
エンジン 直列4気筒1997cc
最高出力 147ps/6500rpm
最大トルク 21.1kg-m/4400rpm
ギアボックス CVT

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