ワインディングで乗った日産の3台 SUVにミニバンと流行り車の実力は? 災い転じて新たな発見も

公開 : 2024.01.31 17:45  更新 : 2024.02.06 18:09

女神湖周辺の雪道を走り回る雪上試乗会にて日産の3台を試しました。
・アリア B9 e-4orce リミテッド バーガンディ 790万200円
・エクストレイル G e-4orce 474万8700円
・セレナ e-POWERハイウェイスターV 368万6100円

寒い山道で試す日産の技術

もともとは凍った湖の上で行われる日産車の試乗会、ニッサン・インテリジェント・ウインター・ドライブのはずだった。

それが暖冬の影響により氷の状態が思わしくないということで、会場である女神湖周辺の雪道を走り回る雪上試乗会に変更。ところが当日フタを開けてみたらその雪もほぼないというオチ。

日産の3台 アリア/エクストレイル/セレナ
日産の3台 アリア/エクストレイル/セレナ    日産

1年前も似たようなラインナップで日産車の氷上レポートはしている。だから今回はスタッドレスタイヤを履いた試乗車を公道で走らせてみるのもアリかなと頭を切り替えることにした。実際のクルマの使用状況に近いし、たまに路面に氷が張り付いているようなシチュエーションもなくはないのである。

トップバッターはBEVのアリア

走りのキモとなるのはe-4ORCE。車体前後のモーターからの駆動力をブレーキの制御によって適切に4輪に分配するパワートレインとシャシーの統合制御システムである。

昨年はアリアの氷上におけるコントロール性の高さに感心させられたが、今回はどうか?

あらためてアリアを観察してみると、内外装のクオリティの高さがはっきりと伝わってきた。走りの印象も見た目のそれと符合する。床下バッテリーを守る構造材がフロアの補強にも効いているため体幹の強さが「段違い」といっていい。

蓼科(たてしな)あたりのワインディングを少ないステアリング切れ角でスイスイとフラットに切り取っていく。また今回の試乗車の中で最もスタッドレスタイヤ装着の悪影響を感じなかった点も評価できる。

タイヤに頼らず、e-4ORCEでスタビリティを確保できている効果だろう。冷涼な空気の中でアリアを思う存分走らせたあと久しぶりに「技術の日産」という言葉が思い浮かんだ。

ギミック満載、今後の進化に期待の1台

「技術の日産」という点ではエクストレイルだって負けてはいない

アリアほど未来的なスタイリングとはいえないが、駆動系に同じくe-4ORCEを採用している。

アリアと違うのはパワートレインがe-POWER、つまりエンジンで発電した電力をバッテリーに溜め、そしてモーターを駆動させるシリーズ・ハイブリッドであること。BEV特有のシンプルな構成のアリアに対し、今ある技術を全て投入した「全部のせ」感の強いモデルである。

日産の3台 アリア/エクストレイル/セレナ
日産の3台 アリア/エクストレイル/セレナ    日産

走り出してすぐに感じたのは、エンジン音だった。発電用であるはずなのに、こちらのスロットルワークをトレースするように回転数が変化して、単なるガソリン車に乗っている気分になる。

特に今回、発電し続けている時間が長いと感じたのは、ツイスティで勾配のきつい山道と、暖房の温度をキープしなければならない極寒状況との相性の悪さだろう。

一方ドライブフィール自体にもまとまりのなさを感じた。見た目通りに重心が高く、ロールも大きくなりがち。ロールの頂点では柔らかめのスタッドレスタイヤがフラフラしてしまい、ピタッと定まらない感じを助長する。

アリアでは姿勢をフラットに保ち、走りの質感を上げていたはずのe-4ORCEの恩恵も感じられなかった。エンジニア氏いわく、デビュー2年でシステムが複雑なこともあり、まだまだに詰めていける領域が多く残されているとのこと。アリアの出来の良さを考えれば、今後の進化に期待せずにはいられない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。BMW 318iコンパクト(E46)/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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