【シビックらしさ】新型は失われたのか? いい所、気になる所

公開 : 2021.08.15 08:45  更新 : 2021.12.13 21:24

「今のシビックは大きい」「値段が高い」と嘆く声は理解できます。しかし新型には、新型なりの“シビックらしさ”がありました。

11代目は、大きいのか?

1972年のデビューから数えて11代目となる新型シビック。実車を見て資料を読んだ感想から、力の入ったクルマではないかと感じている。

まずはコンセプトワード。爽快シビック。ひさしぶりに「○○シビック」というフレーズが帰ってきた。なにが爽快かはこれから説明していくとして、ワンダーシビックやスポーツシビックを思い出すキャッチコピーは、若い頃にこれらに接した世代として嬉しい。

新型シビックEX(プラチナホワイト・パール/6MT)
新型シビックEX(プラチナホワイト・パール/6MT)    宮澤佳久

先代は日本製セダンと英国製ハッチバックが用意されていたが、今回は日本製ハッチバックのみとなった。セダンは近い車格でインサイトがあるし、路上で目にするのは圧倒的にハッチバックが多かったので納得している。

そもそもシビックは、1990年代まではホンダを代表するスポーティなハッチバックとして多くの人に親しまれてきた。ところが21世紀に入って4ドアセダンを主役に据えたあたりから国内での販売が伸び悩み、9代目ではタイプR以外は日本では売られなかった。

復活した先代で2つのボディを用意し、ハッチバックのほうが人気だったのでこちらに絞り込んだのかもしれない。

ボディサイズは全長4550mm、全幅1800mm、全高1415mm、ホイールベース2735mmで、先代と比較すると、全長は30mm、ホイールベースは35mm長くなり、幅は同じで、背は5mm低くなった。この大きさを見て「もはやシビックではない」という声も聞かれる。

新型が手に入れた“らしさ”

たしかにトヨタカローラスポーツやマツダ3ファストバック、フォルクスワーゲン・ゴルフに比べれば長い。

その代わり背は低い。シビックらしいスポーティさとキャビンの広さを両立させるための外寸と考えている。

新型シビックLX(ソニックグレー・パール/CVT)
新型シビックLX(ソニックグレー・パール/CVT)    宮澤佳久

新型ホンダ・シビック:全長4550×全幅1800×全高1415mm
トヨタ・カローラスポーツ:4375×1790×1460mm
マツダ3ファストバック:4460×1795×1440mm
フォルクスワーゲン・ゴルフ:4295×1790×1475mm

それにロングホイールベースのおかげで、身長170cmの筆者がドライビングポジションを取った後ろで、楽に足を組んで座れる。

ひとクラス下のフィットやヴェゼルでもやはり足を組んで座れるので、ホンダでは珍しいことではないけれど、マンマキシマム・メカミニマムという思想が受け継がれていると感じる。

スタイリングは、ファストバックスタイルは同じであるものの、かなりスッキリした。たしかに爽快だ。

しかもフロントフードやサイドのキャラクターラインが水平に近く、Aピラーを後方に引いたという処理は、アコードやヴェゼルなど最近のホンダ車に共通する。

目的の1つは視界の良さで、ここも爽快ポイントだとホンダでは説明しているが、少し前までのロボットアニメ風造形に辟易していた筆者としては、姿そのものがクリーンになったことに好感を抱いた。

インテリアもすっきりした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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