アイルランドのホープ、クレイグ・ブリーン WRCタイトル獲得に意欲 Mスポーツの野心的ドライバー

公開 : 2022.05.08 06:05  更新 : 2022.11.01 08:56

フォードMスポーツのラリードライバー、クレイグ・ブリーン。WRCフル参戦は未経験ですが、その実力は見逃せません。

「勝利と悲劇」に彩られたキャリア

フォードにとって重要な世界ラリー選手権(WRC)を率いる32歳のクレイグ・ブリーンが、これまでフルシーズンを戦ったことがないというのは、かなり意外な事実だ。

アイルランド出身のクレイグは、これまで7回の表彰台を経験している。しかし、自身のキャリアは「勝利と悲劇」によって定義されてきたと話す彼にとっては、ほぼ予想通りの結果だという。

クレイグ・ブリーン
クレイグ・ブリーン

クレイグがモータースポーツから離れてもおかしくないような状況は、これまでに2回あった。1つ目は、2012年6月にシチリア島で起きた事故で、コ・ドライバーのガレス・ロバーツが命を落としたとき。2つ目は、シトロエンが2019年の契約を更新せず、同シーズン終了後にWRCから撤退したときである。

しかし、彼は離れなかった。ガレスの死後、クレイグはロバーツ家にラリー継続を認めてもらうよう求め、彼らはそれを快く受け入れたのだ。「もし、僕がいなくなったら、一緒にやってきたことが無駄になる」と彼は言う。そしてこの年の暮れには、スーパー2000のタイトルを獲得し、言葉では言い表せないほどの成功を収めた。

2018年にシトロエンとの契約が終了したとき、クレイグはすべてが終わったとほぼ確信していたという。ずっと昔にカートでキャリアをスタートさせた彼には、カートの世界選手権への出場オファーが届くだろうし(年齢や身長に関係なく)、彼がそれに応えていたとしてもおかしくはない。今のところカートには復帰していないが、クレイグはやり残したことがあると語る。「ラリーを終えたら、またカートに戻ろうかな。とてもピュアなスポーツなんだ」

カートに復帰しなかったのは、ヒョンデが白羽の矢を立てたからだ。パートタイムの参戦ではあるが、クレイグは2019年から2021年にかけて出走した9つのラリーで4つの表彰台を獲得した。フルタイムのドライバーを中心に作られたマシンで、だ。

フォードで掴んだチャンス

この素晴らしいフォームと諦めない姿勢が、Mスポーツ代表のマルコム・ウィルソンを納得させ、クレイグは今年、ハイブリッド・ラリーの新時代を走るフォードと契約したのだ。クレイグは3位でフィニッシュしている。

「シーズンのスタートとしては完璧だった。今後もこの状態が続くだろう。Mスポーツは、他のチームほど大きなリソースを持っていないかもしれないけど、それをハードワークと110%の努力で補っている」とクレイグ。

クレイグ・ブリーン
クレイグ・ブリーン

第2戦スウェーデンGPでは、2度にわたってスノーバンクに突っ込むという「災難」に見舞われたが、直近のクロアチアGPでは再び表彰台争いに加わって4位となり、現在ランキング3位をキープしている。

ハイブリッド・パワーと空力特性の向上により、前世代とはまったく異なるタイプのマシンとなったが、これまでと違って自分を中心にマシンを構築するチャンスがある。

「故郷に帰ってきたような気がするよ。キャリアが再生されるようなものだ。僕はフォードとMスポーツからスタートし、フィエスタでスーパー2000とWRCアカデミーを制覇した。父は、フォードでアイルランドチャンピオンになった人だ。子供の頃のヒーロー、フランク・ミーガーもフォードに乗っていたしね」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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