フォード・マスタング・マッハE 詳細データテスト 加速も操縦性も注文あり バッテリーに改善の余地

公開 : 2022.05.07 20:25

マスタングの名を持つEVは以前テストしましたが、今回はその高性能版。たしかに速さは高まっていますが、欧州生まれのRSやSTのようなドライバーズカーとしての魅力は伴わず、乗り心地も改善の余地あり。今後に期待です。

はじめに

2020年、フォードはまだ初の量産EVであるマスタング・マッハEに関して、ひとびとの興味や関心を煽り立てている段階にいたが、それをちょっとばかり沸き上がらせ、それより盛大にスモークを上げてみせたのは、デモンストレーションのためにワンオフ製作された4WDモデルのマッハE1400だった。

このクルマ、ドリフトのエースドライバー、ヴァン・ギッティンJrがコクピットに収まり、この年は各地のイベントに登場した。その任務は、EVの可能性を実現する技術のアピール。7つのモーターで約1400psを発揮するそれは、たしかにその仕事を果たした。

テスト車:フォード・マスタング・マッハE GT AWD
テスト車:フォード・マスタング・マッハE GT AWD    MAX EDLESTON

プロトタイプと比較すれば、当然ながら生産モデルはそこまで突き詰めた仕様ではなく、採算を考慮したものになっている。そこで気になるのは、今回テストするマッハE量産版の最上位仕様にして最強モデルであるマッハE GTは、2020年のプロトタイプの路線を踏襲したものなのか、それともまったく物足りないものなのか、という点だ。

英国に初上陸した右ハンドルのマッハEは下位グレードで、GT到来にはそれから15ヶ月ほどかかった。価格は、プレミアムブランドのEVよりわずかに安いが、もしもドライバーズカーとして不足があった場合には許容できない程度の価格差しかない。

つまるところ、これは速いフォードでもあり、電動化一辺倒の時代においてそれをゼロエミッションで成し遂げたはじめての例でもあり、そしてなんといってもマスタングを名乗るクルマなのだ。

煙を吐き出す昔ながらのマッスルカーではないにせよ、応えるべき期待を数多く背負わされて生を受けたこのクルマ。しかし、非常に出来のいい競合車の中には、すでにうかうかしていられないほど近い価格で販売されているものもある。具体的にいうなら、ポルシェBMW、そしてテスラだ。しかも、フォルクスワーゲンのIDブランドやキアあたりも、遠からずライバル車を投入してくる。前途は多難だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事