ルノー・キャプチャーにEテック! 個性的フルハイブリッド、小型SUVをどう変える? 試乗レポート

公開 : 2022.08.25 08:05

走り、静粛性の評価は?

加速の印象はルーテシアに似ていて、アルカナほどエンジンを回すことはなく、こまめに変速して回転数を低く抑えてくれる。

力の余裕もルーテシアと同等に思えた。低くクロスしたギア比のおかげかもしれない。

ルノー・キャプチャーEテック・ハイブリッド・レザーパック(ブランナクレM)
ルノー・キャプチャーEテック・ハイブリッド・レザーパック(ブランナクレM)    前田惠介

それでいて静粛性は、ロードノイズが気になるシーンもあったルーテシアより明らかに上で、車格の違いを感じさせるアルカナとの中間という印象を受けた。

それ以外はEテックの美点そのまま。

メカニカル・ギアボックスならではのダイレクト感は、多くのハイブリッド車とは一線を画しているのに、ドッグクラッチという機構から連想されるショックはなく、スムーズそのものでもある。

ルノーの独創性が存分に発揮されたユニットであり、走りを愛する人たちが生み出したパワートレインであることが伝わってくるのである。

重量差と足回りについて

サスペンションはルーテシアEテック・ハイブリッド同様、重量増に対処してやや固められているようだ。しかしハードに思えるシーンもあったルーテシアとは対照的に、キャプチャーでは固さがいい方向に働いていると感じた。

前述したタイヤサイズはエンジン車と同じだ。

キャプチャーEテック・ハイブリッド・レザーパックの荷室。シートバックを倒し、160mmスライドする後席を一番前にし、フロアボードを下段に落とした状態。上段にあるときはフラットな空間が広がる。
キャプチャーEテック・ハイブリッド・レザーパックの荷室。シートバックを倒し、160mmスライドする後席を一番前にし、フロアボードを下段に落とした状態。上段にあるときはフラットな空間が広がる。    前田惠介

ルーテシアに比べて明確に太く大径のサイズは、ビジュアル面でSUVらしさをアピールする狙いもあったのだろうが、それゆえにエンジン車では、荒れた路面での足元の重さが気になることがあった。

それがEテック・ハイブリッドでは、重量増に合わせて足を固めたことで、バタつきが抑えられ、落ち着きが増していたのだ。

ただし今回乗った車両は試乗会としては珍しく、オドメーターが3000km近くまで到達しており、初期の固さがこなれていた可能性もある。

直進性はルノーの例に漏れず優秀。

市街地での試乗だったのでハンドリングをしっかりチェックする機会には恵まれなかったものの、エンジン車が持つバランスの良さはしっかり受け継いでいた。

20km/L超えの燃費 注目点は?

WLTCモードで22.8km/Lという数字は輸入SUVでナンバーワンであり、輸入車全体で見てもルーテシアEテック・ハイブリッドの25.2km/Lに続くものだ。

試乗でもメーターの燃費計で20km/L近くをマークした。

メーター右側にパワートレインの状況が表示される。写真はEV走行の状態。WLTC高速道路モードの燃費は、Eテックの見どころの1つ。
メーター右側にパワートレインの状況が表示される。写真はEV走行の状態。WLTC高速道路モードの燃費は、Eテックの見どころの1つ。    前田惠介

ところでカタログの数字を見ると、日本製ハイブリッドが苦手とする高速道路モードでの燃費の落ち込みが少ないことがわかる。

ボディサイズが近い日産キックスe-POWERの2WDと比べると、平均では23km/Lとキックスがやや上回るが、高速道路モードは21.6km/Lに留まり、22.6km/Lのキャプチャーが逆転する。

これは他のEテック・ハイブリッドにも共通する美点であるが、3台を相次いで乗って、トータルバランスはキャプチャーが秀でていると感じた。

アルカナはクーペSUVというパッケージング、400万円を超える価格がハードルになる人がいそうだし、ルーテシアはエンジン車の軽快感や快適性も捨てがたいと思えてしまう。

キャプチャーは欧州でも、直近のデータではアルカナのみならずルーテシアよりも売れている。SUV人気を反映しているとも言えるが、これもまた多くの人に勧められるEテックという理由になりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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