バッテリー増量で航続531kmへ アウディQ8 55 eトロンへ試乗 名称変更 快適性は不変

公開 : 2022.12.30 08:25  更新 : 2023.09.22 18:48

フェイスリフトでバッテリーを増量し、航続距離を伸ばしたQ8 eトロン。BMW iXのライバルを、英国編集部が評価しました。

Q8 eトロンへ名を改めバッテリー増量

アウディ初の量産バッテリーEV(BEV)、eトロンが発売されたのは2018年。最大150kWという急速充電能力には唸らされたものの、航続距離はそこまで印象的な数字ではなかった。それから4年を経て、アップデートの時期がやってきた。

同社の強い意気込みを感じさせるのが、モデル名も一緒に改められたこと。現在人気を集めているQ4 eトロンや、間もなく発表されるQ6 eトロンといったモデル構成のフラッグシップに据えるべく、Q8 eトロンを名乗るようになった。

アウディQ8 55 eトロン・スポーツ(欧州仕様)
アウディQ8 55 eトロン・スポーツ(欧州仕様)

アルミホイールとフロントバンパー、フロントグリルなど、デザインに手が加えられているが、変化は限定的といえる。一部のモデルとは異なり、クーペボディのスポーツバックでも整ったプロポーションに変わりはない。

ハンサムなスタイリングはそのまま。それ以上の改良が、外から見えない場所に施されている。

現在までに駆動用バッテリーの技術は進歩し、高いエネルギー密度が実現されている。そこで今回の改良で、エントリーグレードのQ8 50 eトロンに搭載される容量は71kWhから89kWhへ、55では89kWhから106kWhへ、2割ほど増やされている。

さらに駆動用モーターの効率を向上。ボディの空気抵抗も改善することで、電費効率も高めている。とはいえ4.1km/kWhに留まり、現在のライバルと比較して秀でているとはいえない。試乗時は、メーター用モニターに平均で3.5km/kWhが表示されていた。

急速充電能力は、最大で170kWまで対応する。他方、ジェネシス・エレクトリファイドGV70では240kWを実現している。

アウディらしい上質な車内 静かで快適

航続距離はカタログ値で531kmへ伸ばされた。気温などにもよるが、現実的には370kmから400km程度だと考えていいだろう。

他にもステアリングレシオをクイックにし、エアサスペンションにも調整が加えられた。電子制御のスタビリティとトラクション・コントロールも、より知的なシステムになったという。

アウディQ8 55 eトロン・スポーツ(欧州仕様)
アウディQ8 55 eトロン・スポーツ(欧州仕様)

インテリアの変更は小さい。製造品質は高く、内装素材は高級。アウディらしい仕上がりだ。ダッシュボード中央には上下2段にタッチモニターが据えられ、下段はエアコン用。実際に押せるハードスイッチの方が扱いやすいとは思うものの、反応は悪くない。

上端はインフォテインメント・システム用。こちらも鮮明でメニュー構造がわかりやすい。スポーツシートは適度に身体を保持し、座り心地に優れる。小物入れなどの収納スペースもふんだんにある。

さて、実際に発進させてみると、Q8 eトロンの快適性に感心する。0-100km/h加速は5.6秒で充分に鋭い。アクセルペダルの操作に対するレスポンスは、テスラなどのように過激ではなく至って健全。遮音性も高く、車内はとても静かだ。

試乗車には、カメラ映像を用いたバーチャル・サイドミラーが装備されていた。これにより航続距離を8kmほど伸ばせるという。高速域では風切り音も軽減できるそうだが、110km/h前後ではさほど違いはない。アウトバーンなら効果を発揮するだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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