「飛躍的」な進化を証明する ランドローバー・ディフェンダー アウディQ8 e-トロン キアEV9 3台比較(2)

公開 : 2024.02.17 09:46

ディフェンダーやQ8 e-トロンへ対峙する、EV9 急速に実力を高める韓国キアの実力は? バッテリーEVとプラグインHVの垣根を超え、英国編集部が直接比較

お高めの価格を裏付けるアウディの高級感

3台のリアシートへ目を向けると、3列シートを備えるのはキアEV9だけ。2列目は非常に広く、空間的な快適性ではライバル以上だ。しかもスライドでき、必要に応じて前方へ寄せて折りたためる。

前列シートの上部に載る、独立したヘッドレストのデザインも良い。前方に突き出ていて、後ろに座ると圧迫感が少ない。

レッドのアウディQ8 eトロン55クワトロ・フォアシュプルングと、ブルーのキアEV9 GTラインS
レッドのアウディQ8 eトロン55クワトロ・フォアシュプルングと、ブルーのキアEV9 GTラインS

ランドローバーディフェンダーには、8シーターの130もラインナップされるが、プラグイン・ハイブリッドは設定されない。リアシートに座ると、天窓のおかげで明るく開放的。大きいサイドウインドウで、走行中の景色を楽しめる。

アウディQ8 e-トロンも、大人5名が問題なく長距離移動できる。他の2台のような、リビングルーム的なコンフォート感はなくても、内装の高級感はトップ。デジタル技術を好むなら、大きなタッチモニターが美点になる。シートの座り心地もベストだ。

既に登場から数年が経過し、Q8 e-トロンの新鮮味は薄れつつあるが、組み立て品質は高いまま。スイッチ類などはソリッドで、触感的にも特別感が漂う。お高めの価格を裏付けるように。

車内空間のゆとりや利便性では、EV9とディフェンダー 110が並ぶといえる。部分的には、前者の方が有利でもある。内装の高級感や知覚品質、素材選びという点では、Q8 e-トロンが2台を引き離している。

ドイツやスウェーデンの上級ブランドからEV9へ乗り換えを検討する人は、インテリアが期待値へ届いていないと感じるかも。もう少し、特別感があって良いだろう。

大きく重たいEV9が、より速く高効率

続いて、一般道での走り。高価な大型SUVにとって、重要視される部分だ。ロンドンの北、ノーサンプトンシャー州の郊外で乗り比べると、それぞれの強みが見えてきた。

車重を比較すると、19.2kWhの駆動用バッテリーを積むディフェンダー 110 P400eの方が、106kWhのQ8 e-トロン 55クワトロより重い。99.8kWhで全長が1番長いEV9の方が、さらに100kg以上も重い。

ブラックのランドローバー・ディフェンダー 110 P400eと、ブルーのキアEV9 GTラインS、レッドのアウディQ8 eトロン55クワトロ・フォアシュプルング
ブラックのランドローバー・ディフェンダー 110 P400eと、ブルーのキアEV9 GTラインS、レッドのアウディQ8 eトロン55クワトロ・フォアシュプルング

大きく重たいEV9が、Q8 e-トロンより速く、実環境でのエネルギー効率に優れているとしたら、きっと驚くだろう。まさに、筆者はその1人だった。

最高出力が383psと3台で最も低く、全長5015mmもあるEV9が、スペック表で0-100km/h加速5.3秒を主張するとおり、現実でも最も速い。2基の駆動用モーターはリニアに反応し、豊かなトルクを引き出しやすい。

8速ATを介する、プラグイン・ハイブリッドのディフェンダー 110のように、変速は不要。全力を解き放つため、2.0L直列4気筒エンジンの始動を待つ必要もない。

不思議なことに、2基の非同期モーターを積むQ8 e-トロンは、407psへ期待されるパワー感を得にくい。単体では不満なく速いものの、EV9並みの勢いは示さないようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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