売れた4気筒 売れなかった6気筒 アルファ・ロメオ1900 スーパー 2600 ベルリーナ 後編

公開 : 2023.07.01 07:06

1950年代と1960年代にアルファ・ロメオが提供したサルーン。生産数が大きく異なる2台を、英国編集部が振り返ります。

英国に存在する2600 ベルリーナは1台のみ

アルファ・ロメオ1900を一般道で走らせれば、現代の交通にも充分ついていける。4気筒ツインカム・エンジンは滑らかに回転し、2速で引っ張れば80km近くまで加速できる。3速なら110km/hに届く。

ステアリングコラムから伸びるシフトレバーは、19本ものリンクで繋がっており、遊びが大きい。慣れれば、悪くないペースで変速できるようになる。

アルファ・ロメオ2600 ベルリーナ(1962〜1968年)
アルファ・ロメオ2600 ベルリーナ(1962〜1968年)

ブレーキはドラムで、充分にペダルへ力を込めないと期待した制動力は得られない。ステアリングホイールも、低速域ではかなりの腕力を要する。ある程度予測的な運転が求められる。70年以上前に設計・生産されたクルマだと、気遣う必要がある。

乗り心地は印象的なほどにしなやか。スピードが乗ってくると、ステアリングホイールが軽くなり、ダイレクトな反応を楽しめる。アルファ・ロメオらしく、カーブを小気味よく縫える。

対して、ホワイトの2600 ベルリーナはジェレミー・ウィルソン氏が2016年に購入したアルファ・ロメオ。500台足らずが生産された右ハンドル車で、南アフリカで発見したという。

「家族と一緒の長距離旅行に耐えられる、4シーターのクラシックカーを探していたんです。もともとイタリア車が好きで、ランチア・フラミニアと悩みましたが、最終的に2600を選びました」

南アフリカからの輸入には苦労したと彼は振り返るが、現在はボディのサビと格闘中。英国に存在する2600 ベルリーナは1台のみ。欧州全土に範囲を広げて探しても、3・4台ほどしか売りには出ていないようだ。

明らかに速い6気筒 制動力も強い

前期型ではベンチシートにコラムシフトという組み合わせだったが、ウィルソンのクルマのように、後期型ではセパレートシートにフロアシフトへ変更されている。メーターパネルには、リボン式のスピードメーターとタコメーターが備わる。

1960年代のイタリア車らしく、警告灯も並んでいる。ガラスの曇りを取り除く、ファンも備わる。ペダルはフロアヒンジで、荷室は1900と同じく広い。シャシーには、4000km毎にグリスアップが求められる部分が16か所もある。

アルファ・ロメオ2600 ベルリーナ(1962〜1968年)
アルファ・ロメオ2600 ベルリーナ(1962〜1968年)

ボンネットに収まるのは、1900が搭載する4気筒エンジンと見た目が似ている、ツインカムの直列6気筒。ウィルソンの2600 ベルリーナには、ウェーバー・キャブレターが2基載っているが、本来ならソレックスのツインキャブが見えるはずだ。

とはいえ、吸気サウンドが気持いい。いつ交換されたのか定かではないというが、彼は特に気にかけていないそうだ。

ステアリングホイールを握ってみると、6気筒エンジンの方が明らかに速い。窓の面積が大きいため、車内は明るく、視認性も優れている。フロントブレーキはディスクで、サーボアシストも備わり制動力は充分強い。

1900の4速に対し、5速マニュアルという点もアドバンテージになるが、ギア比は良くない。1速が非常に低く、すぐに2速へシフトアップが必要。1000rpm当たりのスピードは、5速では28.9km/hになる計算で、1900と一致する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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