ストリートレーサー的な加速 カプリ RS 3100 高性能フォード:欧州での60年(2)

公開 : 2023.07.29 07:06

ロータスと手を組んだ、コルティナの誕生は1963年。以来、運転好きを惹き付けてきた高性能な欧州フォードの60年を、英編集部が振り返ります。

レーシングカーとは別の3.1L V6エンジン

フォードの高性能部門が提供したすべてのモデルが、モータースポーツへ真剣に向き合い、ハードエッジに仕上がっていたわけではない。1973年に提供されたフォード・カプリ RS 3100は、その好例といえる。

ベース車両のカプリ 3000 GXLとは、僅かながら見た目の差別化が図られている。だが、ナンバープレートが与えられたRS 3100は、サーキットでしのぎを削ったレーシングカーと、かなり違う内容にあった。

フォード・カプリ RS 3100(1973年/英国仕様)
フォード・カプリ RS 3100(1973年/英国仕様)

このカプリ RS 3100は、ロンドンの東、アヴレイに拠点を置くフォード・アドバンスト ビークル・オペレーションズ(AVO)が開発した、2番目のホモロゲーション・カプリ。1台目はドイツ向けに開発された、左ハンドルのRS 2600だった。

カプリ RS 3100が誕生した目的は、1974年の欧州ツーリングカー・チャンピオンシップへの参戦。ライバルのBMWは、3.0 CSLのエンジンを2986ccから3003ccへ拡大し、3.0L以上のクラスで善戦していた。

フォードは、2994ccのV型6気筒エセックス・ユニットを3091ccまでボアアップ。モデル名のRS 3100の由来となった。

しかしコスワースが開発した、ツインカム24バルフヘッドを搭載するV6エンジンとは明らかに別のユニットでもあった。レーシングカーのカプリは、460psを発揮していた。

実際のところ、イメージ優先のモデルといえた。それでもRS 2600と同様のアップグレードが投じられ、しっかり能力は高められていた。

オイルショックの影響で生産は2か月の247台

フロントブレーキには、大径のベンチレーテッド・ディスクを採用。フロントがマクファーソンストラット式、リアがリーフスプリングとリジッドアクスルという組み合わせのサスペンションは改良され、ビルシュタイン・ダンパーが取り付けられた。

フロントバンパーにはチンスポイラーが、トランクリッドにはダックテールスポイラーが与えられ、バンパー自体はブラックアウト。ゴールドのサイドストライプでボディは飾られ、アグレッシブさも増していた。

フォード・カプリ RS 3100(1973年/英国仕様)
フォード・カプリ RS 3100(1973年/英国仕様)

最高出力は、6バルブヘッドを共有する3000 GXLと同じ150psへ留まった。だが、最大トルクは23.8kg-mから25.8kg-mへ増強。0-97km/h加速を8.0秒でこなし、最高速度は199km/hに達した。

ところが、1970年代初頭にオイルショックが世界を襲う。ガソリン価格は高騰し、排気量の大きいRS 3100も影響を受け、1973年11月から12月の2か月間に247台しか生産されなかった。

モータースポーツでの活躍があっても、英国では販売が低迷。値引きしても売れ残った50台は、オーストラリア市場へ輸出された。

写真のモデナ・グリーンが眩しいカプリ RS 3100を持ち込んでいただいたのは、クリス・グリフィス氏。以前にはヒルクライムやスプリントレースで活躍していた車両で、1986年に彼が購入したという。

オリジナルとの違いは、レーシングカーのRS 2600を彷彿とする純正オプション、ケルン・ボディキットをまとうこと。幅が7.5Jもあるワイドなホイールが組まれ、この5台ではひときわ存在感が強い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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