有能なベーシックカーが最高の素材 フォーカス ST170 高性能フォード:欧州での60年(5)

公開 : 2023.07.30 07:06

ロータスと手を組んだ、コルティナの誕生は1963年。以来、運転好きを惹き付けてきた高性能な欧州フォードの60年を、英編集部が振り返ります。

34ps増強されたモンデオ ST200

1990年代後半は、フォードの高性能モデルにとって混迷の時期といえた。XRグレードは消滅し、RSコスワースも終了。欧州フォードのスポーティなモデルには、統一感に欠けるネーミングが与えられていた。

振り返ると、フィエスタ・ゼテックSにレーシング・プーマ、エスコート GTIなどがラインナップされていた。落ち着いたサルーンのスコーピオに、エスコートという特別なグレードが追加されるほどだった。しかし、モンデオ ST24が次の流れを生み出した。

フォード・フォーカス ST170(2002~2005年/英国仕様)
フォード・フォーカス ST170(2002~2005年/英国仕様)

このSTが、ストリート・テクノロジーの略なのか、スポーツ・テクノロジーの略なのかは定かではない。それでも、スポーティでカッコ良く仕立てられていたことは間違いない。エスコート XR3のように。

1997年のモンデオ TS24は、専用ボディキットとアルミホイールでスタイルアップし、スポーツシートが載った、上級トリムグレードの1つだった。だが、1999年に登場した台数限定のST200では、2.5L V6エンジンが34psも増強されていた。

当時、フォード・モンデオはスポーティなサルーン/ステーションワゴンとしてクラスをリードする存在にあった。そこへ追加されたST200は、訴求力を一層補強することへ貢献した。

その頃は2ドアクーペだったプーマのレーシングも、同様の効果を果たした。もし登場が少し遅ければ、モンデオのようにSTを冠していたことだろう。

洗練の走りで驚かせたフォーカス

この2台へ関わった人物が、技術者のリチャード・パリー・ジョーンズ氏。世界最高水準の量産車メーカーだという、欧州フォード自体のイメージ向上にも大きく貢献したことは明らかだった。

エスコートの後継モデル、フォーカスの開発では、パリー・ジョーンズの手腕が遺憾なく発揮された。ベーシックな仕様でも、コントロール・ブレードと同社が呼ぶ独立懸架式サスペンションをリアに採用。洗練された走りで、多くのドライバーを驚かせた。

フォード・フォーカス ST170(2002~2005年/英国仕様)
フォード・フォーカス ST170(2002~2005年/英国仕様)

操縦系の重み付けは完璧といえ、クラストップの操縦性を備え、最初から完成度は高かった。フォーカス ST170へ与えられた違いは、これまでご紹介した4台と比較すれば小さい。それでも、ベース車の能力は確実に引き上げられていた。

英国へ拠点を置くフォード・スペシャル・ビークル・エンジニアリング(SVE)によって、2.0L 4気筒エンジンは173psまで最高出力を向上。シリンダーヘッドを改良し、可変バルブタイミングを与え、より高回転域まで許容する鍛造部品が内部へ組まれた。

マツダヤマハが共同開発した、1.6L 4気筒エンジンの印象が生んでいた、フォーカス全体の冴えないイメージを払拭。遅れながらも、スリリングなハッチバックとして輝き始めたのだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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