今でも斬新:シトロエンXM 新時代を告げた:アルファ・ロメオ156 ハッチバックを再定義:フォード・フォーカス 欧州COTYの1番を選ぶ(5)

公開 : 2024.02.17 17:46

欧州カー・オブ・ザ・イヤーが始まってから2024年で60年 これまでの受賞車で、ベスト・オブ・ベストはどれか? 英国編集部が1960年代からイッキ乗り

1990年代 シトロエンXM/アルファ・ロメオ156フォード・フォーカス

今回の審査員、レイ・ハットンは、欧州COTYが1955年に開かれていたら、シトロエンDSが受賞したに違いないと考えている。先進的な技術の民主化は、これまでの審査でも重視されてきた要素の1つといえるからだ。

確かにDSから10年ほどは、それに匹敵する技術を実装したクルマはほぼ登場しなかった。その後継モデルが、1990年代に欧州COTYを受賞したとしても、意表を突かれる結果ではなかったといえる。

歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1990年代の3台
歴代の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞モデル 1990年代の3台

1989年に発表されたXMは、奇抜な技術を積極的に採用してきた、シトロエンの姿勢に忠実だった。シャープなスタイリングを手掛けたのは、ジョルジェット・ジウジアーロ氏。合計13枚に分割されたガラスエリアは大きく、明るく開放的な車内空間を生んだ。

フロントノーズはくさび状に尖り、ヘッドライトはスリム。空気抵抗を小さく抑えている。低いボンネット内に収まったのは、2.0Lか2.1Lの4気筒ユニットで、ボディサイズを考えると燃費は感心するほど優れていた。

当時のAUTOCARは、XMを「世界最高の乗用車」だと称賛したが、その大きな理由となったのが、進化したハイドラクティブ・サスペンション。窒素ガスが充填した球体と、専用オイルを充填したダンパーで構成される、通称ハイドロサスだ。

基本的な技術はCXの延長上にあるが、XMはコンピューターとセンサーで制御。走行速度やブレーキの圧力、ステアリングの角度を検出し、サスペンションが調整された。優しいクッションのような乗り心地だけでなく、緻密な姿勢制御も叶えていた。

ハイドロサスの乗り心地が好きなら気に入る

真っ白なXMをお持ちいただいたのは、オーナーのロブ・ドレイパー氏。今でも見た目は凛々しく、充分にアバンギャルドだ。

だが、スティーブの印象は冴えない様子。「ハイドロサス特有の乗り心地が好きなら、とても気に入るはず。でも、ボディやインテリアのデザインは、CX以上に良いとは思いません。特別さも薄く、製品的な訴求力は超えないでしょう」

シトロエンXM(1989〜2000年/英国仕様)
シトロエンXM(1989〜2000年/英国仕様)

「想像より豪華ではないようですね。運転姿勢は、商用バンのように起き気味。でも、嫌いではありませんよ」。と話すのは、奇抜に感じたというマット。

「XMには、それ以前のシトロエンと同様に、ステアリングホイール上のスイッチなど、新しいアイデアが盛り込まれています。長距離移動に適した、素敵なクルマだと思います」。と評価するレイだが、欧州COTYで最後の曲者だったとも付け加える。

確かに、1994年はフォード・モンデオ、1995年はフィアットプントが欧州COTYに選ばれた。その後、1998年に選ばれたのが、アルファ・ロメオで初受賞となった156。発表は、1997年のドイツ・フランクフルト・モーターショーだった。

フィアット傘下の同社にとって、転機となる記念すべきモデルで、欧州COTYもその実力を高く評価した。スタイリングは、社内デザイナーだったウォルター・デ・シルバ氏。ジュリアジュリエッタなど、象徴的なモデルからの影響を感じさせる。

ルーフラインはクーペのようにカーブを描き、リアドアのハンドルはピラー部分と一体化。フロントのナンバープレートは、逆三角形の盾型グリルを避けるようにオフセットされ、同時期のサルーンと一線を画す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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