BMW i3

公開 : 2014.03.26 18:32  更新 : 2017.05.29 17:59

今さらだが、日産の次に電気自動車(以下EV)に社運を賭けるメーカー(テスラなどの専業メーカーは例外として)がBMWになろうとは、ちょっと想像できなかった。彼らの出自はいうまでもなくエンジン屋であり、昨今のクルマづくりの文法では最も使いにくい(?)直列6気筒をいまだに手放さない。今から10数年前に「次世代車の決定版!」として燃料電池車が世界で盛り上がったときにも、BMWだけは水素エンジン推し。当時は「世界中がEVになっても、BMWだけは内燃機関と心中するつもりなのでは?」と思わせるほどだった。

しかし、その後、燃料電池車の実用化はそう簡単ではないことが判明すると、先進諸国は官民あげてバッテリー式のピュアEVにカジを切った。そこに、いち早く乗ったメーカーのひとつがBMWだった。専用車によるEVビジネスを目指す“プロジェクトi”がBMW社内でスタートしたのは2007年という。翌08年秋にはミニEを発表して、世界各地で実証実験をスタート。日本でも10年春から計20台のミニEを輸入して、うち14台を一般ユーザーに貸し出した。さらに12年7月からは、i3のパワートレインを先行搭載した1シリーズ(アクティブE)を日本のタイムズ24カーシェアリングに供給してリアルワールドなデータを収集。厳密にいえば、このアクティブEがBMWの自社開発EV第1号といっていい(ミニEの動力システムは米ACプロパルジョン社製)。

さて、今さらいうまでもなく、このi3は全身がEV専用開発で、しかもリースやレンタルなどの制限なく普通に売られるEVである。いま日本でお金を出せば普通に買えるEVは、ほかに日産リーフ三菱i-MIEV/ミニキャブMiEV、テスラ・モデルSくらいしかない。価格はノーマルモデルで499万円、レンジエクステンダー付き仕様が546万円(ともに4月以降の8%消費税込み価格)。この原稿を書いている3月中旬時点では、新年度のEV補助金額は確定していないが、従来どおりの基準で補助金が交付されるとすれば、i3はノーマルモデルが最大40万円引きの実質459万円、レンジエクステンダー仕様が最大75万円引きの実質471万円になるという。ノーマルモデルの航続距離はJC08モードで229km。これは最新の日産リーフとほぼ同じである。

日本の路上で見るi3の実物は、写真から想像していた以上に目立つ。独特の2トーンカラーや“ストリームフローライン”というサイドウィンドウ・グラフィックなどのデザイン要素も、i3を際立たせている要因のひとつであることは事実である。リヤに向けて絞り込まれるようなストリームフローラインは、従来型BMW伝統のホフマイスターキンクに代わって、iシリーズ共通のデザインモチーフだという。しかし、i3が醸し出す存在感の本当のキモはそこではない。それ以上にプロポーションそのものが異様なのだ。

ほぼ4mというBセグメント級の全長に、全高は1550mm。1775mmという全幅こそかなりワイド気味だが、Bセグのハイトワゴンと考えれば、このスリーサイズは特異とまではいえない。しかし、2570mmというホイールベースは異例なほど長く、しかも19インチという専用開発の大径ナロータイヤがオーバーハングの短さをさらに強調する。ボンネット(i3は床下ミドシップレイアウトなのでノーズにさしたるメカは入っていない)は、昨今の軽ハイトワゴンを知る日本人の目にことさら短く見えるわけではないが、この大径タイヤと全体に前のめりのデザイン、そして天地に低いサイドウインドウ(i3は高床式パッケージ)などがあいまって“実車版ミニ四駆”というかチョロQ感が、これまでにないほど濃厚だ。さらに前後から見ると、1775mmというワイドボディに155という超ナロータイヤの組み合わせが、なんともシュール。とにかく目立つことこの上ない。

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