BMW i3

公開 : 2014.03.26 18:32  更新 : 2017.05.29 17:59

売れ筋はレンジエクステンダー仕様か
注目のレンジエクステンダー(以下RE)仕様車は、補助金を含めるとノーマルモデルとの実質価格差が一気に10万円強まで縮まる(と予想される)ので、日本ではREが売れ筋になる可能性が高い。エンジン付きのRE仕様は、原理的にはハイブリッドの一種であり、「ガソリンを入れれば、どこまでも走ることは可能」という事実はたしかに心強い。

i3のノーマルモデルとRE仕様では130kgの重量差があり、なるほど加速性能はわずかに鈍って、リヤタイヤが太くなるためにアンダーステア傾向が強まった気がしないでもないが、単独で乗るかぎり、紙上スペックでイメージするほどの体感差はない。バッテリー残量が75%を切ると、手動でREを起動できるようになり、走行中にエンジンがかかる。ただ、われわれがよく知るハイブリッド車とはちがって、エンジン回転とスロットル操作とはまったく独立しており、いくつかのパターンがあるようだが、基本的にはあるレベルでの一定速運転が基本。エンジン回転は細かく上下しない。運転席から聞いているかぎりは、2気筒エンジンのサウンドは「どっか遠くでブーンと鳴っている」という他人事感が強い。当たり前だが、RE仕様も乗り味はほぼ完全にEVである。

REの役割はあくまで補助充電器であり、積極的にエンジンを焚いて電気を出し入れすることは想定していない。エネルギー効率も純粋なEV走行時とは比較にならず、i3はあくまで外部充電によるピュアEVとして走るのが基本。だいたい燃料タンク容量はわずか9ℓだから、外部充電をまったくしないと、約100kmごとに給油しなくてはならない計算である。REは原理的にはシリーズハイブリッドだが、われわれがよく知るハイブリッド車とは別物なのだ。そう考えると、頻繁にREを起動させなければならない使用パターンには、i3はそもそも向いていない。

航続距離に不安があるEVではREは心強い味方ではある。しかし、「REがないと実用に耐えない」という用途や生活パターンでは、そもそもEVに乗るメリットは薄い。逆にいうと、EVが本格普及するには「REなんぞ無用の長物」と素直に思えるくらいにバッテリー技術と社会インフラが進化・整備される必要があるだろう。そう考えると、REは過渡的な技術と思われる。

ちなみに、i3の唯一最大のライバルといえる日産リーフの実質価格は補助金(2013年度は最大78万円)を差し引くと230~300万円強だから、i3とは200万円もの差がある。だから実際にこの2台をならべて迷う人は少ないだろうが、EVを“ちょっと面白いセカンドカー”として注目する富裕層には、圧倒的に新しいデザイン、未来感と独自性たっぷりの乗り味、“世界初の量産CFRPボディ”などの技術ウンチク……と、i3の商品性はリーフの比ではなく高い。

(文・佐野弘宗)

ビーエムダブリュー i3/ビーエムダブリュー i3レンジ・エクステンダー

価格 499.0万円 546.0万円
0→100km/h 7.2秒< 7.9秒
最高速度 150km/h 150km/h
航続距離 229km(JC08モード) 300km(参考値)

CO₂排出量 0g/km< 13g/km
車両重量 1260kg< 1390k

電気モーター形式 同期モーター 同期モーター

モーター配置/駆動方式 リヤ/後輪駆動 リヤ/後輪駆動
最高出力 170ps/5200rpm 170ps/5200rpm
最大最大トルク 25.5kg-m/100-4800rpm 25.5kg-m/100-4800rpm
レンジエクステンダー形式 ―― 直2DOHC、647cc
レンジエクステンダー最高出力 ―― 34ps/4300rpm
馬力荷重比 135ps/t 122ps/t
変速機 単段式固定ギヤ比 単段式固定ギヤ比

全長 4010mm< 4010mm
全幅 1775mm 1775mm
全高 1550mm 1550mm
ホイールベース 2570mm 2570mm
燃料タンク容量 ―― 9ℓ
荷室容量 260-1100ℓ 260-1100ℓ
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット マクファーソン・ストラット
サスペンション(後) 5リンク 5リンク
ブレーキ(前) Vディスク Vディスク
ブレーキ(後) ディスク ディスク
タイヤ(前) 155/70R19 155/70R19
タイヤ(後) 155/70R19 175/60R19

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