パンダへ通じる魅力 ジープ・アベンジャーでアルプス山脈へ 海抜1700mの充電器を目指す 前編

公開 : 2023.08.12 09:45

ジープ初のBEV、アベンジャー。ブランドの将来を占う重要なモデルの実力を、英編集部が過酷なロードトリップで確かめました。

ニューモデルのなかで異彩を放つデザイン

ここからは雲の上で見えないが、道の先に小さな料金所がある。できれば日没前にゲートを通過し、ホテルのバーで休息を取りたいところだ。

現実は、そう甘くない。バッテリーEVのオーナーならご理解いただけると思うが、メーター用モニターへ表示される予想の航続距離は、実際に走れる数字とは限らない。大抵は、数10km単位で短くなるものだ。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)
ジープアベンジャー・サミット(欧州仕様)

これまで筆者は数多くのBEVへ試乗し、試算と現実との違いを目の当たりにしてきた。だが、今回は影響度が違う。30km以内の差なら問題ない。それを下回ると、このロードトリップは失敗に終わってしまう。

今朝へ時間を遡ろう。筆者とカメラマンは、イタリア北部、ヴェローナのジープ・ディーラーを出発した。ジョルジェット・ジウジアーロ氏が描き出した、年代物のフィアット・パンダを追い越しながら。

遥々やって来た理由は、ポーランド・ティヒの工場からラインオフしたばかりの、ジープ・アベンジャーをお借りするため。ボディは眩しいイエローに塗られ、フォルムは直線基調でスクエア。最近のモデルのなかで、異彩を放っている。

デザインの評価は人それぞれだと思うが、筆者の目にはカッコよく映る。古いパンダやラーダ・ニーヴァとも通じる、雰囲気を感じる。

イエローの充電ケーブルが繋がれ、51kWhの駆動用バッテリーは充電済み。出発前のモニターには、400kmの予想航続距離が示されていた。

海抜1700mの充電ステーションを目指す

アベンジャーは、ジープにとって大きな節目となるモデル。地域によっては納車が始まっている。そこで英国編集部では、小さな電動オフローダーの実力をじっくり確かめることにした。

ヴェローナを北に向けて出発し、グロースグロックナー高山道路の南側に位置する料金所を目指す。そこは海抜1700mの高さにあり、ヴェローナから約340km離れている。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)

オーストリアで最も標高の高い位置に敷設された舗装道路で、アルプス山脈を越えられる。スポーツカー乗りにとっては、最高の快楽を得られるルートの1つに数えていい。

そして21世紀らしく、料金所にはバッテリーEVの充電ステーションが存在する。そこまで無充電で到着し、120kWの急速充電を済ませ、戻ってくることが目標だ。壮観な景色と、ヘアピンカーブが連続する道を楽しみながら。

ジープ・ラングラーなら、山肌を果敢に攻めたかもしれない。それでも、オーストリアまでのワインディングは、新しい電動クロスオーバーの資質を確かめるのに不足ないドライブになる。

アベンジャーには、欧州でのジープの業績を上向かせるという大切な役割がある。伝統のラングラーは極めて有能なモデルで、ファンも少なくないが、シリアス過ぎて大量に売れるモデルとはいえない。

フィアットは2011年にジープの親会社、クライスラーを買収。その後、レネゲードを筆頭に、欧州市場を意識したクロスオーバーが開発された。その結果、イタリアでのシェアは高まったものの、まだ欧州全体では期待に届いていないという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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