ブランド大変革のEV SUV ジープ・アベンジャーへ試乗 欧州に向け新開発 航続408km 前編

公開 : 2022.12.12 08:25  更新 : 2023.02.19 08:43

全長4080mmとコンパクトなEVのジープが登場。欧州市場に向けて開発された新型の実力を、英国編集部は高く評価します。

欧州にフォーカスした小型クロスオーバー

ジープ・ブランドは、欧州では余り大きな支持を得ていない。現在はステランティス・グループへ統合されたものの、それ以前はフィアットクライスラー・オートモービルズ傘下だったこともあり、イタリアだけは例外のようだが。

近年の欧州市場では、SUVやクロスオーバーが売れ筋車種になっている。ところが、ジープが占める割合は1%程度に留まっている。

ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー(欧州仕様)

そんな状況を打開すべく、ステランティス・グループが大きな期待を寄せているのが、今回ご紹介する新モデル。バッテリーEV(BEV)のジープ・アベンジャーだ。

欧州市場に合わせて設計からデザインまで進められた初めてのジープで、生産自体も欧州の工場で行われる。アベンジャーは、北米市場では販売される予定がないという。

全長は4080mm、全幅が1780mm、全高が1530mmとコンパクトなSUVで、ルノー・キャプチャーフォルクスワーゲンTクロスなどと同じBセグメントに属する。しかも、時代を先取りしたBEVでもある。

購入時のユーザーの悩みを少なくするため、トリムグレードなどの設定はシンプルなものになるという。お好みで数種類のオプションパッケージと、ボディカラーを選べば済むらしい。

ジープの欧州部門を率いるアントネッラ・ブルーノ氏は、「適正なタイミングでの適正なクルマ」だとアベンジャーを表現する。その実、競争力はなかなか高そうだ。

クラスではトップクラスの走破性

駆動用モーターはフロント側に1基が載り、最高出力156ps、最大トルク26.4kg-mを発揮する。駆動用バッテリーは実容量で51kWh。航続距離は最長408kmがうたわれ、急速充電は最大100kWに対応する。ジープだが前輪駆動となる。

エアコンには、効率に優れるヒートポンプ式を採用。10%ほど航続距離に違いが出るそうだ。

ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー(欧州仕様)

イタリアやスペインはBEVを受け入れられる態勢が充分に整っておらず、ガソリンエンジンを搭載したアベンジャーも販売される。だが、英国には導入予定がない。

コンパクトな前輪駆動でBEVと聞くと、どこへでも目指せるというブランドの製品イメージへ合致しないように感じるかもしれない。ところが、アベンジャーの実力はこのクラスではトップクラスといっていい。

悪路でモノをいう路面とボディとの角度は、フロント・オーバーハング側のアプローチ・アングルで20度、ホイールベース間のブレークオーバーが20度、リア・オーバーハング側のデパーチャーで32度もある。最低地上高は200mm確保されている。

走破性を高めるため、ステランティス・グループのeCMP2プラットフォームを採用した同クラスのモデルより、前後のオーバーハングは30mmほど短い。各アングルは、ひと回り大きいジープ・レネゲードに匹敵するという。

ちなみに、全長4236mmのレネゲードもBセグメントのSUVではある。アベンジャーは後継モデルではなく、補完し合う関係になるとのこと。このカテゴリーの人気ぶりを考えると、個性の違うモデルが2台並んでもユーザーは見つかるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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