パンダへ通じる魅力 ジープ・アベンジャーでアルプス山脈へ 海抜1700mの充電器を目指す 前編

公開 : 2023.08.12 09:45

混雑した市街地を軽快に縫える小ささ

そこで現在のステランティス・グループは、欧州市場へ一層特化させたアベンジャーを開発したのだ。売れ行き次第では、BMW iXクラスの電動SUV、ワゴニアのバッテリーEV仕様も投入する予定だという。

果たして、アベンジャーは期待に応えられる内容といえるのか。ライバルには、ボルボEX30プジョーe-2008などが挙げられる。ブランドが重ねてきた80年の歴史のなかで、初めて北米以外で設計が進められたモデルだから、可能性は未知数だ。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)

シャープなボディの内側には、オペルモッカと共有するアーキテクチャを備える。アイコンといえる7スロット・フロントグリルに見合うだけの、冒険心を満たせるモデルなのだろうか。目的地の急速充電器までの道のりで、答えが見えてくるはず。

ヴェローナからの出発は順調。コンパクトなボディで、混雑した市街地を軽快に縫っていく。サスペンションのストロークは長く、タイヤのサイドウォールは厚く、古い石畳でも乗り心地は快適。ロードノイズも大きくない。

ジープらしい無骨さを漂わせる見た目だが、全長4084mm、全幅1776mmと、上から見たサイズはフォルクスワーゲン・ポロとほぼ同じ。運転席の視点は高く、ドライビングポジションは快適。駆動用モーターはレスポンシブで、至って安楽だ。

スポーツ・モードを選ぶと、最高出力156ps、最大トルク26.4kg-mからイメージするより遥かにたくましく走る。ところが今回は、340km先の中腹まで駆動用バッテリーを温存しなければならない。自ずとエコ・モード縛りになる。

クラス最高水準と呼べるインテリア

一般的に電動パワートレインは静かで滑らかだが、連続した高速走行や長く続く登り坂は、あまり得意ではない。当初の400kmより航続距離が短くなることは確実だろう。

現実的な条件で評価するため、大型トラックの後ろでスリップストリームを利用することは考えていない。ボンネットとフェンダーの隙間などをテープで塞ぎ、空気抵抗を減らす小細工もしない。気温は高く、エアコンは通常通り使うつもり。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)

両側にぶどう畑が広がる、22号線を走る。操縦性は、フォルクスワーゲン・ゴルフプジョー308といった車高の低いハッチバックに届いていないものの、明確に劣るわけではない。正直、印象はかなりイイ。

あえて軽めに設定された、ステアリングホイールの反応は若干緩い。とはいえ、主なフィールドとなるであろう都市部では扱いやすい。長距離通勤も、不満なくこなせるはず。全体的な動的特性は、印象的なまでに洗練されている。

インテリアの仕上がりも素晴らしい。コンパクトカーだから、ローコストなプラスティック製部品が部分的に用いられていることは事実ながら、クラス最高水準と表現できる。

お借りしたアベンジャーはトップグレードのサミットで、ダッシュボードにはボディと同色のカラートリムがあしらわれていた。細かなテクスチャーが施され、全体の雰囲気を引き締めている。これがないと、雰囲気が大きく変わりそうだ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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