適度な興奮 キア・ニロEV 長距離走が得意 ルノー・メガーヌ E-テック・エレクトリック 手頃で楽しいEVのベストは?(2)

公開 : 2023.09.26 19:05

バッテリーEVも運転を楽しめる 現在の有能な6台へ英国編集部が比較試乗 現実的な価格帯のコンパクトEV、2023年ベストを選出

適度な興奮を与えるほど強力 キア・ニロEV(188点)

バッテリーEVで高い評価を集めるキアだが、ニロEVは今回の6台では5位の得点になった。パワフルなMGモーター MG 4 Xパワーや、やんちゃなアバルト500eと並んでしまうと、ちょっと魅力では及ばない。

それでも、一般的なユーザーにとって、キア・ニロEVは運転が楽しいバッテリーEVであることは間違いない。航続距離はホンダeの3倍近くあり、急速充電能力も高い。高速道路のサービスエリアで、貴重な週末の時間を充電に充てる必要性は減る。

キア・ニロEV 4(英国仕様)
キア・ニロEV 4(英国仕様)

しかも、ドライバーへ適度な興奮を与えるほどパワフル。ステアリングはダイレクトで、反応も悪くない。一方で、道幅の狭いワインディングでは少々ボディが大きく感じられ、サスペンションも柔らかすぎる。ちょっとバランスが悪い。

基本的にニロEVは快適で実用的な、ファミリーカーとして設計されている。そもそも、鋭い走りは期待しない方がいい。

タイヤは、幅が細い効率重視のコンチネンタル・エココンタクト。グリップ力はさして高くない。垂直方向の姿勢制御は落ち着かず、ヘアピンカーブを爽快に駆け抜けられるタイプではない。

高く評価できる洗練性と乗り心地

トラクション・コントロールは初代より煮詰められ、介入が自然になった。だがアクセルペダルを踏み込むと、濡れた路面では簡単にフロントタイヤが暴れてしまう。実際、アスファルト上で数mほどスピンを続ける場面もあった。

とはいえ、穏やかに走っている限り、洗練された印象が伴う。乗り心地はしなやかだ。他の5台のすべてに当てはまるわけではない、好ましい個性もある。審査員の1人は、冗談半分にジャガーSタイプを例に挙げながら、次のようにまとめた。

キア・ニロEV 4(英国仕様)
キア・ニロEV 4(英国仕様)

「洗練性は高く評価できます。直線スピードに不足はなく、コーナーでの挙動も予想しやすいですね。それでも、グリップやトラクションは及第点。魅力的とまではいえないでしょう」。数年前なら、もっと高得点を狙えたかもしれない。

キア・ニロEV 4(英国仕様)のスペック

英国価格:4万2295ポンド(約765万円)
全長:4420mm
全幅:1820mm
全高:1570mm
最高速度:167km/h
0-100km/h加速:7.8秒
航続距離:458km
電費:6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1739kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:64.8kWh
最高出力:203ps
最大トルク:40.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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