30人弱の従業員で1日70台生産 AI活用「スマート工場」 顧客体験を豊かに

公開 : 2023.11.23 18:05

・ヒョンデがシンガポールで運営する「スマート工場」に潜入。
・最小限の人員とAIで運営。1日8時間のシフトで70台を製造。
・注目から納車までたったの6時間? 「お食事」付きの特別体験。

注目からわずか6時間で納車

韓国の自動車メーカーであるヒョンデは、AI(人工知能)とロボットを活用した工場により、注文からわずか6時間後に自動車を製造し、納車することができる。

今回初めて公開されたこのスマート工場は、シンガポールのイノベーション・センター敷地内にある。現在はEVのアイオニック5を製造しており、2024年からはアイオニック6の製造を開始する。ヒョンデは世界中の都市に同様の施設を置く予定で、シンガポールではその試験を兼ねている。

AI活用のスマート工場では、顧客体験に焦点を当てている。
AI活用のスマート工場では、顧客体験に焦点を当てている。

ブランドの高級化に向けた取り組みの一環として、ヒョンデはパーソナライゼーションと顧客体験に重点を置きながら、現地の都市市場へのサービス提供を目的としている。

「ここは単なる工場ではなく、カスタマー・エクスペリエンス・センターです。お客様と密接な関係を築くことができます」と工場長のアルペッシュ・パテル氏は言う。

このプロセスの起点となるのが「アイオニック・ラウンジ」で、ユーザーはそこで自分だけのクルマを構成し、注文する。同ラウンジ限定のオプションも用意されている。

ユーザーはその後、VRルームに案内され、クルマが製造されるシミュレーション映像を見る。その後、スクリーンが立ち上がり、実際の工場現場と実物のクルマが映し出される。

そこから敷地内のレストランに向かい、ロボット管理のスマート農場で栽培された農産物を食し、イタリアのフィアットの旧リンゴット工場のように、工場の屋根に設置されたテストコースでクルマのテスト走行を見学する。

最後に、完成したクルマはロボットによってロビーに届けられる。

しかし、なぜこのような顧客体験を推し進めるのだろうか? 「パーソナライズの価値提案は、非常に理にかなったものです」とパテル工場長は言う。今後数年間で、ヒョンデのラインナップに完全な「マス・パーソナライゼーション」を展開していくとのことだ。

AIが主導権を握る

工場ではAIを活用し、最小限の人員で運営を行う。メタファクトリー(デジタルツイン)を使用して、大規模出荷などの仕事を処理するためのシミュレーションを行い、いつ、どこに、どれだけの数のロボットを配置するかを検討する。

目標は、デジタル・コマンドセンターにいる人間の担当者とともに、AI頭脳が日々のオペレーションと将来の計画立案を主導することだ。

ロボットアームが窓やドアの取り付けなどの作業に対応する。
ロボットアームが窓やドアの取り付けなどの作業に対応する。

パテル工場長は「ここにあるのはベースラインです。2027年までには、人間は反応するのではなく、確認する自律的な存在にしたい」と述べている。

また、この工場ではセル生産方式を採用しており、これは同じラインで異なる複数のモデルを同時に生産できる柔軟な方式である。在庫の移動から品質管理、パーツの取り付けまであらゆる作業をこなすAIロボット軍団とともに、シンガポール工場はわずか29人の技術者で運営され、1日8時間のシフトの間に70台(今後増える可能性がある)を製造できる。

「より少ない人員で、より多くの技術的な仕事をこなしています」とパテル工場長。スキルの低い低技能労働者はどうなるかとの質問に対しては、その仕事が失われることを認めたものの、AIを活用した従業員のスキルアップが次の一手だと述べた。

「最終的にわたし達が思い描いているのは、AIが従業員を助けるというものです。すべて生産性とトレーニングのためです」

同氏によると、このようなハイテクを駆使した運営方針は、3万4000人の従業員が毎日5600台の自動車を生産している韓国の蔚山工場のような、従来型の工場で展開される可能性は低いという。しかし、効率性を向上させるものであれば何でも検討するとも述べた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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