STIが手がける“tS”シリーズはエンジン本体には手を入れず、ボディ補強とシャシーチューンで魅せる「そこはかとなく、しかしちょっとやそっとじゃなく確実に良いスバル」を目指したコンプリートカーである。

じつは編集部に届いた試乗会の案内には“新しいレガシィのtS”としてか書かれておらず、私はてっきり2.0ℓ直噴ターボのDITベースだとばかり思っていた。しかし、実際にはご覧のとおり、今回のベースは2.5ℓ自然吸気を積む2.5i……というか、正確にいうと、例のステレオカメラ安全装置がついた“2.5iアイサイト”である。自然吸気エンジンのtSはこれが史上初、そしてもちろんアイサイト付きSTIも史上初である。

STIのコンプリートカーといえば、半自動的に最強ターボエンジンが相場と思い込んでいた。それはSTI自身も同じで、これまでのtSは車種を問わずにすべてターボだったが、安価で燃費のいい自然吸気への要望も意外に少なくなかったという。たしかに“そこはかとなく良いスバル”というtSシリーズのありようには自然吸気も似合う。また、もはや「スバルといえばアイサイト」といっていいくらい人気のアイサイトも、もはやSTIだから例外といえる状況ではないらしい。

今回のレガシィtSも、その仕立て内容はいつものtS（の最新版）である。タイヤは18インチのポテンザRE050A、STI謹製スプリングにビルシュタイン倒立ダンパー、フロントの独創的なフレキシブルタワーバーに、リヤにもフレキシブルサポートバーにピロボール・ラテラルリンクなどが備わる。各部の補強は“硬めるのでなく、いなす”思想なのが、tS最大のマニアくすぐりポイントといっていい。左右4本出しマフラーもいかにもSTIだが、ノーマルは片側出しのため、ボディがtS専用。具体的にいうと、エンジンは自然吸気だが、ボディは特別に両側マフラー対応のターボ用が使われる。ここはメーカー直系ならではだ。