「異なる時間」が始まるDOHC アルファ・ロメオ2000 GTV x フォード・コルティナ II ロータス(2)

公開 : 2023.12.17 17:46

1970年代にしのぎを削った、アルファ・ロメオとフォードxロータスのクーペ 英国では倍の価格差にあった2台 英国編集部が比較試乗で魅力を振り返る

異なる時間が始まるツインカム・エンジン

ロータスから、あえて距離が置かれたフォード・コルティナ II ロータスだったが、約8割は初代のイメージへ通じる、アーミン・ホワイトで塗装された。多くのボディサイドは、オプションだったシャーウッド・グリーンのストライプで飾られた。

初期型では「ABCC」のエンブレムがリアに貼られたものの、途中からツインカムの記載へ変更。1968年のマイナーチェンジでは、ボンネットとトランクにFORDとアルファベットが並んだ。ロータスの色は、徐々に消されていった。

ホワイトのフォード・コルティナ II ロータスと、アイボリーのアルファ・ロメオ2000 GTV
ホワイトのフォード・コルティナ II ロータスと、アイボリーのアルファ・ロメオ2000 GTV

アルファ・ロメオ2000 GTVの隣に止まるコルティナ II ロータスは、小さなストックカー・マシンのよう。ホイールは13インチで小さいが、5.5Jとワイド。スクエアで直線的ながら、ヒルクライム・レースへピッタリな、やる気に満ちた雰囲気を漂わせる。

運転席へ座ると、ドライビングポジションの優秀さへ感心する。レザー巻きのステアリングホイールが手を伸ばした自然な位置にあり、3枚のペダルに不自然なオフセットはない。足元も広い。

今回のクルマは1970年式の後期型で、ダッシュボードが初期型と異なる。電流と油圧、水温、燃料の補機メーターが、ヒーター用操作パネルの上に並ぶ。

全面的にレストアを受けており、内装は真新しいものの、素材はベーシック。当時のフォードの量産車と、大きな違いはない。

しかし、ツインカム・エンジンを目覚めさせると、明らかに異なる時間が始まる。アイドリング時から騒々しく、自ずと走りへの期待が高まる。1960年代のクラブレーサー的なサウンドが周囲へ充満する。

期待通りの体験がドライバーへ強く響く

ところが、グレートブリテン島東部の国道、A64号線を流れに合わせて走っても、若干エンジンは息苦しそう。良好な状態とはいえないアスファルトと、防音材がまばらな内装が影響し、車内は常にうるさい。

4速マニュアルのギア比はショートで、出だしは鋭い。0-97km/h加速を11.0秒でこなし、1967年の1750 GTVより0.2秒だけ勝る。

フォード・コルティナ II ロータス(1966〜1970年/英国仕様)
フォード・コルティナ II ロータス(1966〜1970年/英国仕様)

ステアリングは直進時が若干曖昧で、セルフセンタリング性も弱い。だが、姿勢制御は1960年代のモデルとしては引き締まり、フロントタイヤのグリップを引き出せる。攻め込んでいくとオーバーステア傾向が現れ、好ましいバランスにあるとわかる。

純粋で正直な操縦性を、コルティナ II ロータスは叶えている。期待通りの体験が、特定の年齢には強く響くに違いない。

ホクホク顔のまま、アルファ・ロメオ2000 GTVへ乗り換える。ボディカラーは珍しいアイボリーだが、ジョルジェット・ジウジアーロ氏のスタイリングは精悍。アルプス山脈を登り詰めそうな、勇ましさも漂う。

全幅は1575mmで、コルティナ II ロータスとほぼ同値ながら、全長は約180mm短い。その影響が、リアシートの空間に表れている。実用性で劣っても、個人的に魅力を感じるのはこちらの方だが。

シートは、コルティナと同じくビニールレザー張り。表面に細かな穴が空き、ヘッドレストも備わり、上質さでは勝る。ドアパネルの質感も高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アルファ・ロメオ2000 GTV x フォード・コルティナ II ロータスの前後関係

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