公道の治外法権レベル ポルシェ911GT3RS レースカー疑似体験マシーンの最前線

公開 : 2023.12.31 20:25  更新 : 2023.12.31 22:58

992型のポルシェ911GT3RSに試乗しました。992型は素の911カレラで新車価格1620万円のプライスタグを掲げる今、GT3RSは3378万円/試乗車はオプション追加で4000万円オーバーの個体です。

白い初夢グルマがやってきた

クルマ好きが見る究極の初夢!

なんて言ったら、いきなりF1マシーンまで飛躍してしまうのかもしれない。だがナンバー付きに限定すれば、最新のポルシェ911GT3RSはその立派な候補になるはずだ。しかも候補車の中でトップクラスにリーズナブルかも!?

ポルシェ911GT3RS
ポルシェ911GT3RS

といっても今回の試乗車、ポルシェ911GT3RSの車両価格は3378万円也。そこに605万5000円のヴァイザッハパッケージ等の必須オプションがのっかると4000万円を超える!
素の911カレラ(1620万円)のざっと2倍以上。標準のGT3(2600万円)より750万円も高いGT3RSだが、何しろこの賑やかな見た目である。その物理的な価値を視認しやすいモデルといえるだろう。

4Lのフラット6エンジンの最高出力は標準のGT3の510psに対し525psに設定されている。たった15psアップ? と思った方は昨今のターボ感覚に漬かり過ぎているのでは? チューニングし尽くした自然吸気エンジンからさらなる15psを絞り出すのは並大抵の努力ではないはず。とはいえポルシェ曰く、今回のGT3RSで特筆すべきはシャシーの方。それもエアロダイナミクスなのだとか。

最初に目につくのは、スワンネック式と呼ばれる上吊りの大型リアウイングだろう。標準のGT3でも上吊りだが、生えている場所も違えばウイングも1枚増えて2枚刃になっている。観察しはじめるとそれだけで日が暮れそうなGT3RSなのである。

選べる箇所の多さ、そしてエアロに驚愕。

この超大型2枚刃リアウイングにはさらなる秘密が隠されている。ステーとウイングとの接点には赤いアルマイト仕上げの油圧アクチュエーターがあり、上側のウイングを可変させる。

F1でおなじみDRS(ドラッグ・リダクション・システム)を備えているのだ。F1ではオーバーテイクの瞬間にフラップを倒して空気抵抗を減らす目的。だがこちらは普段使いのローダウンフォースと本気走りのダイナミックダウンフォースを走行設定画面から選択。ダイナミックの方は走りに応じてフラップがアクティブに動き、当然のようにブレーキングも助けてくれるらしい。

ポルシェ911GT3RS
ポルシェ911GT3RS

一方リアのダウンフォースが増すとフロントが浮いてしまう! ということでフロントにもDRSが隠されている。3つに分散していたラジエターを中央1個に集め、標準のGT3よりさらに大きなボンネットフードの孔から上方に抜く。

これだけでもダウンフォースの量は増えているが、さらにバンパーの両脇から導入された空気の流路をフラップで変える形でダウンフォースの量が調整される。

さらにさらに、ステアリング上には普通のポルシェでは1個しかないダイヤルがなんと4つもあり、それによって前後ダンパーの伸び側と縮み側を別々に、電子制御LSDもスロットル・オンとオフ側を別々、さらにトラクションコントロールも細かく調整することができる。これぞ夢にまで見た「レースカー疑似体験マシーン」の究極の姿ではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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