ポルシェ911 詳細データテスト 精密さ極まるシャシー レースカー並みの空力 積載能力はほぼ皆無

公開 : 2023.12.02 20:25  更新 : 2024.02.12 17:30

GT3 RSは、想像より公道走行がキツくないクルマ。ただし、普段使いするには荷室面の実用性が期待できず、公道で楽しむには限界が高すぎ。そもそも入手困難ですが、日常的に乗るならGT3を選ぶのが賢明かもしれません。

はじめに

2020年半ば、バカでかいリアウイングをつけた911の試作車を捉えた写真が出回った。当時われわれは、これが新型GT3 RSのプロトタイプなのか、はたまたレースカーのテストベッドなのか、判断しかねたものだ。いや、むしろレースカーなのではないかと思ったというのが正直なところである。それほど、ウイングが巨大だったのだ。

ところが、フタを開けてみればそれはナンバー付き車両のプロトタイプで、できあがったのは992世代のGT3 RSだった。市販911としては、もっとも挑戦的なモデルである。ヴァイザッハの慣習どおり、これはGT3の進化系だ。

テスト車:ポルシェ911GT3 RS
テスト車:ポルシェ911GT3 RS    MAX EDLESTON

すでに能力が高く、先進的で、とてつもなく速いベース車に、RS化で目に見えて改良できるほどの余地があるのか、そういう疑問を持つひとは少なくないはず。そこでポルシェが選んだアプローチは、パワーアップや軽量化ではなかった。ダウンフォースの大幅な増強を求めたのである。

その値は、じつにGT3の3倍で、GTEクラスのレースカーである911RSRを、最高峰のル・マン仕様に仕上げた際と同等だという。前後ともアクティブエアロを採用し、サスペンションのウィッシュボーンの形状まで空力設計されたのは、いかなGT3 RSとはいえ初の試みだ。ついでに言えば、コクピットからダンパーとデフを調整できるのもはじめてだ。

間違いなく、新型GT3 RSはサーキット向け911を再定義するクルマだ。データを見る限り、なかなかに魅力的なマシンだといえる。また、その斬新なルックスは、歴代GT3 RSを乗り継いできたオーナーでさえ予想できなかったであろうほどワイルドだ。

しかし、やりすぎではないか、という疑念があるのもまた事実だ。極限のラップタイムを得るため、ほかのすべてを犠牲にしたのではないだろうか。それとも、アンドレアス・プロイニンガー率いるGTモデル開発チームは、前例がないほどサーキット志向でありながら、正真正銘の911らしい守備範囲の広さや使い勝手も兼備したクルマを完成させているのか。その辺りを確かめてみたい。

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