公道の治外法権レベル ポルシェ911GT3RS レースカー疑似体験マシーンの最前線

公開 : 2023.12.31 20:25  更新 : 2023.12.31 22:58

パフォーマンスの出所はどこにある?

今回の試乗場所はいつもの箱根だが、気分はレーサー、場所は某北コース(!?)早速走らせてみよう。

シートは硬くストンとお尻を落とし込むようなバケットシート。ステアリングは触り心地がよく冷や汗をスゥーと吸ってくれるアルカンターラ張り。シフトは7速のPDKで、パドルシフトのクリック感も普通のカレラより軽くて正確に感じられる。

ポルシェ911GT3RS
ポルシェ911GT3RS

すべての防音材が省かれ、薄板のガラスが使われているが、4Lフラット6のノイズは先代のGT3RSほどうるさくなかった。音量自体も静かだし、ボディ全体のビビリも少なめ。

ノーマル/スポーツ/レースの3種類の走行モードの中からノーマルを選んで走り出す。

高回転型のフラット6は5000回転くらい? と思うと7500回転くらい回っており、そこからリミットの9000回転まで突き刺さるように上り詰める。その際はなかなか迫力ある音が後方から響いてくるが、実際は電気的に音を足しているらしい。

盛大に騒音をまき散らさず、しかし乗り手の心を満たす。今どきの騒音規則が生んだ絶妙な落としどころである。

ボディはまるでカーボンモノコックであるかのように軽く硬い印象だが、エンジンがリアエンドにあることはちゃんとわかる。不思議なのは加速している最中でもステアリングを通して前輪の感触がしっかりと感じられる点だろう。

これがフロントのダウンフォースの正体か? GT3RSをドライブしていると、そのありえないパフォーマンスの出所が逐一気になってしまうのである。

ゲームの中から飛び出してきたリアル?

ちなみに現行のGT3は市販の911として初めてダブルウィッシュボーン形式のフロントサスを採用しているので、接地感の良さはそれかもしれない。

ダウンフォースの違いがはっきりと感じられたのはリアの方。ローダウンフォースのまま路面の不整を乗り越えると硬いバネとエンジンの重みでリアが飛び跳ねる時があるのだが、ウイングを立てていると跳ねが一回で収まる。

ポルシェ911GT3RS
ポルシェ911GT3RS

標準のGT3の最高速が320km/hも出るのに対し、GT3RSはローダウンフォースでも296km/h止まり。エアロの効能はハンパないのである。

ダンパーの減衰も興味深かった。伸び側縮み側でプラスマイナス4段階。0も合わせると9段階に可変するのだけれど、1クリックの違いは大きくない。だが驚くべきは2クリック変えた程度でもその違いをクルマがちゃんと伝えてくれること。

LSDも同様で、オン側はリスキーで試せなかったが、オフ側ではターンイン時の曲がり具合に変化が感じられた。これまではゲームの中でしかできなかったようなセットアップ変更を走行中にできてしまう。GT3RSはゲームの中から飛び出してきたリアルカーの如し、なのである。

レースカー疑似体験マシーンのすばらしさは絶対値もさることながら、性能とその変化を乗り手にちゃんと伝えてくれる点にある。正直なところ、軽くて速くなったせいで、リアエンジン特有の気難しさはより大きくなっているように思う。

けれどGT3RSは「アプローチ次第でそれらを克服できるかも!」と思わせるエビデンスに溢れている。これぞ傑作! と快哉を叫びたいポイントはそれなのだ。

試乗車のスペック

価格:3378万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4572×1900×1322mm
最高速度:296km/h
0-100km/h加速:3.2秒
駆動方式:RR
車両重量:1450kg
パワートレイン:水平対向6気筒3996cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:525ps/8500rpm
最大トルク:47.42kg-m/6300rpm
ギアボックス:7速オートマティック
タイヤサイズ:275/35ZR20(フロント)335/30ZR21(リア)

ポルシェ911GT3RS
ポルシェ911GT3RS

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。BMW 318iコンパクト(E46)/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    1986年生まれ。クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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