ドラムブレーキは効かないのでしょうか

佐藤自動車工業所の佐藤です。
難しいことを書くのは好きではありませんが、ドラムブレーキを正しく知っていただきたい。
356のドラムブレーキの部品構成を見ると、ブレーキ整備をしたことのあるプロならば、その大きなアルミ・ドラムに驚きます。
内径とライニングの大きさは、現在の1.5トントラック並みに大きいのです。
しかも鉄鋳物ではなく、アルミ鋳造してあるドラムなんて、コスト度外視の作品といえます。
これは国産車にはありえない立派な造りで、これこそスポーツカーのドラムブレーキと感心してしまいます。

それなのに、あ~それなのに(この歌、知ってます?)、
スプリングと鉄のレバーとカムとギアという、漫画に出てくるような、メカのかたまりなのです。
そのため分解して整備後に、間違って組まれてブレーキが効かない、なんてことがよくあります。
写真の356左前に付いているブレーキの何が悪いのでしょうか?
ドラムブレーキのライニング(ドラムをこすって止める部品)には「向き」があります。
前に回っていくタイヤ(ドラム)を止める、というのがブレーキの大事なお仕事です。
前のブレーキは特に「前方向だけ」に大きく効くようになっています。
ここで緑色のタイヤとドラムが左周りしていて、この左回転をドラムで止めるのがブレーキの役目です。

ブレーキを踏むとブレーキフルードの油圧でシリンダーが伸びて、ライニングを押し出します。
するとライニングを持ち上げ、そのライニングがドラムをこすります。
この、シリンダーが油圧で伸びる(押し出す)というのが油圧システムの「ミソ」です、
パスカルの原理を最大利用して、踏んだ足の力以上の力でブレーキ効果を作りだしています。
シリンダーがライニングを押し出すとき、回転方向側から、わざと斜めに当たると、「てこの原理」(覚えてますか)が発生するように作ってあるので(かしこい人がいたもんで)、サーボ効果(倍力装置ともいいます)を、テコの原理で発生させて、とてもよく効くブレーキとなります。

専門語では「リーディング・ブレーキ」方式と呼ばれ、356のリアブレーキはこれと「トレーリング」方式と組み合わせて、作られています。
前側と後側は違う考え方の組み合わせですので、後側を分解して前後が違っていても驚かないでください。
写真のシリンダーは、前側のブレーキですので、シリンダーの作用の前後が逆、
つまり右回転(バックです!)を止めるのに効果があるように組んでしまったのです。
そのため前進時は、とても弱いブレーキになってしまいました。
私の356は、みんなの356よりブレーキが弱いという方はくれぐれもご注意ください。
特にアメリカのアマメカはブレーキの分解は好きではないようです。
ピカピカなのに間違って組んである、というのがザラにありますのでご注意を。
佐藤自動車工業所
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