アウディS3カブリオレ

■どんなクルマ?

S3セダンに追うかたちで、A3カブリオレのハイ・パフォーマンス版がデビューした。

コンバーチブル・モデルにも ’S’ の称号を与えたことにより、モデル・レンジが拡大されたということにもなる。

かねてからの燃料噴射技術であるMPI(マルチ・ポイント・インジェクション)に加えて、直接噴射技術のFSIを取り入れた2ℓターボ・エンジンは、アルミニウム製ピストンや高張力鋼のコネクティングロッド、2対のバランス・シャフトとともに300psと38.7kg-mを発揮する。

生じたパワーは、6速デュアル・クラッチSトロニック・ギアボックスを介して四輪に分散される。ローンチ・コントロール・システムは標準装備、パドルシフトはマニュアル操作時に大いに力を発揮する。

フロント・アクスルに優先的にパワーが供給されるのだが、仮にフロントのトラクションが失われた場合は、電子制御の多板クラッチを介して後輪にも分配される。

標準装備としては、アウディ製のドライブ・セレクト・システム、可変マグネティック・ダンパーや19インチ・アロイ・ホイール、340mmの大径ディスク・ブレーキなどがある。またSスポーツ・サスペンションのおかげで車高は通常のA3よりも25mm下げられ、ノーマルでも十分に革新的なステアリング・システムのギア比にも変更が加えられている。

電子制御のスタビリティ・コントロールは限界点での性能が高まり、またコーナリング時には内側の車輪に穏やかにブレーキを掛けることによって、旋回性や脱出スピードを向上させる仕掛けもあるという。

アルミ・フィニッシュのドア・ミラーや、特別デザインのバンパー、LEDデイライトを含むキセノン・ヘッドライトなどが、標準モデルとの識別点となるところは、S3サルーンと同様だ。

インテリアは、フラット・ボトムの3本スポーク・ステアリング、グレーのメーターに白色のニードル、Sマークのエンボス加工が施されたフロント・シートなど極々控えめな差別化に留まる。計器類にはブースト・ゲージが追加されたが、そのお陰で温度計は取り払われてしまっているのが残念だ。

パフォーマンスの向上に重点をおいているだけに、標準装備の充実は目を引くほどではないが、それでも左右独立式エアコンやDABラジオ、シート・ヒーター、ブルートゥース接続、5.8インチ・カラー液晶は標準で付いてくる。

■どんな感じ?

ドライブ・セレクト・システムをコンフォート・モードにして走りだせば、いかにS3が快適なクルマであるかがよく分かる。紳士的なスロットル・レスポンスに、迅速でスムーズなトランスミッション、控えめなエグゾーストを目の当たりにして、’S’ という文字に気構えていたこちらは拍子抜けする程だった。洗練され、力量あるプロダクト。これが筆者の第一印象だ。

その後すぐに欠点も顕になった。例えばステアリング。こちらに関しては活気がない。少なくとも正確で、反応は悪くない。そのうえ狙ったラインをトレースすることができるのだが、軽すぎる感覚や、フィードバックの少なさに違和感を禁じ得ない。

サスペンションも瑕疵ありだ。滑らかな路面では至極快適だけれど、凹みやバンプ、うねりの伴う路面では、とくにその欠点に気付かされることになるだろう。粗い路面の増える田舎道では、とたんに落ち着きを失い、容赦なくキャビンに振動を伝えるし、操舵にも少なからず影響がでてくる。

よろこばしいことに、コーナーにおけるサスの動きは、これらの欠点を十分に補ってくれる。Rがきつい場所を高速で走り抜ける時でさえ、粘り強さがあり、ロールは最小限に抑えられているのだ。破綻するそぶりを全く見せないところも良い。

アウディの傾向として、僅かながらアンダーステアが顔を出す仕立てであるのはこのクルマも同じであるが、先進的なスタビリティ・コントロール・システムとクアトロ・システムのお陰で、自在に向きを調整できる。

次にダイナミック・モードにしてみよう。エンジン・レスポンスが鋭利になるだけではなくトランスミッションやサスペンションまでもが一段階上のレベルへと引き締まるのだ。ステアリングも正確性や楽しさを増すために、やや重たくなる。

この結果、速く走らせるために僅かながら体力を要するようになる。あるいはへとへとになり、そしてやや過剰な演出だと感じる向きも増えるはずだ。そういった人には ’オート’ モードが良い。コンフォートとダイナミックのいいとこ取りといった感じで、車速や入力に応じて、ていねいに反応の度合いを見極めてくれるのだ。

エコノミー・モードも選ぶことができる、こちらの場合は気抜けするほどアクセル・レスポンスは鈍くなるのだが、市街地の走行ではこちらが一番理想的だ。その他にも、各種の設定を自分好みに調整することも可能となっている。

直進性能の高さに関しては、もはや疑いの余地はないのだが、あなたが数値から予想するほど荒れ狂っていると言うほどではない。ターボ加給のエンジンは非常にリニアな性格の持ち主で、低速時から一気にアクセル・ペダルを踏み込んでも ’後ろからハンマーで殴られたような’ 加速をするわけではない。

1620kgという車重が大きく影響しているのも確かだろう。だからといって、物足りないと感じることはなく、Sトロニックの紡ぎだす加速を十分にたのしむことはできる。トラクションも十分で、スタンディング・スタートからでもぐいぐいと加速していく。

S3のエンジンの発するサウンドは、TT RSの5気筒エンジンやRS4のV8エンジンのように個性的ではないけれど、タービンの呼吸する音や、意図的に車内に取り込まれれる音、シフト・アップする度に聞こえるバックファイヤーの音などを聞けば、多くの人がきっと楽しい気持ちになれるはずだ。

有能なパワートレインも、横方向の豊富なグリップや正確なステアリングと相まって、コーナーの多いワインディングで楽しむことが出来た。なにしろかなりの速度でコーナーを抜けることが簡単にできるのである。

キャビンのデザインは、今となっては馴染み深く、快適なA3のレイアウトを引き継ぐ。作りこみは細かく、仕上げのレベルも高い。また前部座席にはたっぷりとした広さがあり、後部座席は180cm程度の大人ならば、屋根の開閉状態にかかわらず、悲鳴を挙げないにしてもある程度我慢を強いられることになりそうだ。

幌を閉じた際には洗練のひとことに尽きるのだが、タイヤ・ノイズが終始響いているのが玉に瑕だ。幌を開けばノイズは軽減されるが、風の巻き込みは目立つ。ただし、髪をぐちゃぐちゃにかき乱すほどだったり、声を荒らげなければ相手に聞こえないというほどではないので、さほど不安がる必要はない。

幌を上げた状態でのトランク容量は285ℓ、下げた状態では幌が収まる分あまり荷物は積めなくなる。また、スペアタイヤの代わりに、あまり使いものにならないパンク修理キットが用意される。

ちなみに燃費とCO2排出量の公表値は、それぞれ14.1km/ℓと165g/kmであるが、実際のところは10km/ℓ前後と言ったところだろうか。

■「買い」か?

慣習的にアウディのSモデルは、運転していて楽しいというわけではないのだが、優れた動力性能はもてはやされるに値する。したがってとくにBMWのように運転する楽しさを持った車を引き合いに出せば、おすすめするのは難しかったのだ。

だけれどもS3カブリオレの場合は、そんなことはない。なぜならいまのところ、4シーターのカブリオレで高い運動能力を持ったライバルはゴルフRカブリオレくらいしか無いからだ。

ゴルフの場合は£33,650(498万円)と、アウディに比べて安価だ。ただしS3カブリオレと比較すると、0-100km/hは6.4秒と遅いし、平均燃費も12.2km/ℓと劣る。

もちろんゴルフにも幅広い能力があるのは確かである。しかし、高い安全性や、クワトロならではの季節を選ばないトラクションなどを考えるとS3の方に軍配は上がる。

また仮にこのようなクルマを今すぐ買いたいのではなく、運転がもっと楽しいクルマが欲しいならば、BMWが遅からず発売するであろう2シリーズのカブリオレを待つのも賢い方法かもしれない。

(ルイス・キングストン)

アウディS3カブリオレ

価格 £38,910(673万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 5.4秒
燃費 14.0km/ℓ
CO2排出量 165g/km
乾燥重量 1695kg
エンジン 直列4気筒1984ccターボ
最高出力 300ps/5500-6200rpm
最大トルク 38.7kg-m/1800-5500rpm
ギアボックス 6速デュアル・クラッチ

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