さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀

公開 : 2024.04.23 19:05

ルノーのEVの先駆者といえた、ゾエ 今でも見た目は古くない 最近の電動SUVより優秀な電費 デビュー当時から好きだった、英国編集長のクロプリーが魅力を振り返る

ルノーのEV先駆者 今でも見た目は古くない

多くの量産車は、そっと寿命を迎える。一般的なモデルライフは6年前後。販売台数のピークは生産終了の数年前に迎え、ディーラーでは話題が減り、後継モデルの準備が水面下で進められていく。

欧州全土で約40万台が売れた、ルノーのバッテリーEVの先駆者、ゾエも同じ。既に2023年末で生産は終了している。

ルノー・ゾエ  R110 ZE50(英国仕様)
ルノー・ゾエ R110 ZE50(英国仕様)

ルノー5(サンク) E-テックという後継モデルは、同社のCEO、ルカ・デ・メオ氏が掲げた改革プラン、「ルノリューション」へ先行するカタチで発表され、話題を集めている。4(カトル)とトゥインゴの電動版も、控えているという。

12年もモデルライフが続いたゾエは、フェイスリフトを何度か経たことで、モダンな容姿を維持してきた。すぐに買い替えたいと思うほど、古くは見えない。

クリオ(ルーテシア)の影響を受けた、インテリアのパッケージングも優秀。英国市場で購入できる、最も小型・軽量なバッテリーEVとして、最後までしっかりその役目は果たしてきたといえる。

全長は4087mmしかないのに、車重は1520kgだから、内燃エンジンで走る同クラスのハッチバックより300kg前後重いことは間違いない。それでも、ひと回り大きい電動のSUVと比べれば、数100kgは軽い。

多くの場合、電動SUVは不必要に大きく、われわれには値段が高すぎる。機敏に走るわけでもない。しかし収益性の維持を目的に、各自動車メーカーは積極的に市場へ投入している。筆者には、ゾエが丁度イイ。

過去には英国のベストセラーEVに

自分は、2009年にゾエのコンセプトカーを目撃してから、ずっと高く評価してきた。2012年の発売後、ステアリングホイールを握った時は、仕上がりを称賛せずにいられなかった。

バッテリーEVを所有すること、走らせることを身近なものにした、先駆者だったと思う。シンプルで実用的。ルノーの小さな量産車へ共通する、ユニークなデザインもまとっていた。

ルノー・ゾエ  R110 ZE50と、筆者のスティーブ・クロプリー
ルノー・ゾエ R110 ZE50と、筆者のスティーブ・クロプリー

ただし、モデルライフは少々長すぎた。既知のクルマとして、最近はAUTOCARのページを飾ることもなかった。そこで筆者は、しっかり「さようなら」をゾエへ伝えるべきだと考えた。

ルノーによれば、英国で売れたゾエは延べ3万台に達するという。協力関係にある日産は、リーフをグレートブリテン島で生産しているが、2015年から数年間はこの国のベストセラー・バッテリーEVに輝いてきた。

今回お借りしたゾエは、R110という仕様。数字のとおり、最高出力は110psを発揮する。駆動用バッテリーの容量は52kWh。この上の仕様として、135psのR135も存在するが、このクルマの場合、スペックの差は印象に大きな違いを生まない。

ロンドンから150kmほど離れた住宅地に住み、定期的に首都へ通う必要がある筆者のような人間にとって、最高のバッテリーEVとは小さなハッチバック。自宅に充電器が設置されていれば、必要なエネルギーは毎晩蓄えておける。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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