走りに宿る兄弟の血筋、流麗なスタイリングに操る楽しさ ホンダZR-V

公開 : 2024.02.06 07:05

・洗練されたデザインに優れたパッケージング
・スポーツe:HEVの動力性能に注目
・SUVにしてFFが売れ筋のワケを解説

人気の秘密は、スタイルと走りの良さ

ホンダのミドルクラス・クロスオーバーSUV「ZR-V」。日本仕様が発売されて10か月ほど経つが、あらためて試乗し、その人気の秘密を再確認してみたい。

ZR-Vの2023年における販売台数は2万1168台。ZR-Vの発売開始は4月だから、実質は9か月での数値。さらに2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤーでは10ベストカーに選出。人気も持続しており、2024年の販売台数はさらに増えそうだ。

ホンダZR-V
ホンダZR-V    神村聖

ちなみに、2024年1月末の段階で、受注から納車まではe:HEV/ICE(非ハイブリッド)とも半年くらいだという(ホンダ調べ、以下同じ)。昨年夏ごろは1年待ちなどと言われていたから、供給体制はだいぶ落ち着いてきたようだ。

ZR-Vを購入した人が選んだ理由として挙げているのは、まずスタイルと走りだという。たしかに「グラマラスとエレガント」をコンセプトに、流れるようなシルエットとスポーティなスタンスを球体のようなひとつのボリュームに凝縮したデザインは、カタマリ感もあり走りの良さを予感させる。

街中で乗りまわすのにも適度なサイズだし、SUVならではの高いアイポイントで車両感覚をつかみやすい。それでも車高は1.6mあまりに抑えられているから、セダンやミニバンから乗り換えても違和感は少ないだろう。

パワーテールゲートを標準装備したラゲッジスペースはスクエアで、ステーションワゴンのように使うのに十分な広さ。ヤングカップルから子育て世代、子どもが親離れしたシニア世代まで、幅広い年齢層に受け入れられるのも納得だ。

これぞ「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」

今回の試乗車は、e:HEV Z。パワートレーンは、2Lの直4ガソリンエンジンに2モーターを組み合わせたハイブリッド。ZR-Vでは1.5Lの直4 VTECターボも用意されている。

駆動方式はSUVゆえ4WDも設定されているが、今回はFFを選んだ。これについては、あとで説明しよう。

ホンダZR-V
ホンダZR-V

発進時はモーターで静かに走り出し、ある程度の車速以上になるとエンジンがかかってアシスト。高速道路のような場面ではエンジン主導になり、状況によってはモーターがアシストする。また、クルージング状態ではモーターのみでの走行も可能。

ZR-Vのパワートレーンは基本的にシビック譲りのもの。それゆえ、この走り味はシビックのそれと大きくは変わらない。

それでも、ちょっとしたワインディングロードを走れば、シビック顔負けのスムーズなハンドリングを披露する。コーナリング時のロールも抑えられ、少し目線は高いがSUVではなくシビックを操っている感覚に陥る。

しかも積極的な加速を行うと、無段変速機なのにマニュアルでシフトアップするような段付きでエンジンが回転数を上げていく。さらに、そのサウンドも小気味良く、ハイブリッドであることを忘れてしまう爽快感がある。

スタイリングよし、使い勝手よし。そこに優れた走行性能あり。ZR-Vは、まさにSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)そのものであると再認識できたのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    篠原政明

    Masaaki Shinohara

    1958年生まれ。某自動車雑誌出版社をめでたく? 卒業し、フリーランスのライター&エディターに。この業界に永くいるおかげで、現在は消滅したものを含めて、日本に導入されている全ブランドのクルマに乗ってきた……はず。クルマ以外の乗りものもけっこう好きで、飛行機や鉄道、さらには軍事モノにも興味があるらしい。RJC会員。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

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