シビック譲りの優等生 ホンダZR-Vへ英国試乗 乗り心地と操縦性は◎ 価格はお高め 後編

公開 : 2023.08.31 08:26

有能なシビック譲りのハイブリッドを搭載したクロスオーバー、ZR-V。英国編集部が期待の新モデルを評価しました。

クラストップの優れた操縦性と乗り心地

ホンダの狙い通り、新しいZR-Vの走りは優秀。ステアリングホイールには適度な重みが与えられ、レスポンスも良好。ボディロールは抑制され、競合モデルと比較してシャープなコーナリングを叶えている。

アスファルトの状態が良くない英国郊外の一般道でも、減衰力が煮詰められたサスペンションのおかげで乗り心地は滑らか。高速道路では、補修が必要な区間を通過すると、強めの揺れが届く場面があった。

ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)
ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)

全高が高いため、ボディの動きは確かに多いものの、新しいホンダ・シビックと同等に操れるといっていい。優れた操縦性を求めてクロスオーバーを選ぶ場面は少ないと想像するが、少なくともZR-Vはクラストップの水準にある。

車内で聞こえるロードノイズや風切り音は、シビックより小さい。しなやかな乗り心地も、家族に喜ばれるはず。

自然吸気2.0L4気筒エンジン+2基の電気モーターという、ハイブリッド・パワートレインもシビック譲り。ただし、印象は少し異なる。車重が約100kg多いことと、アクティブ・ノイズコントロール機能が省かれていることが原因といえるだろう。

このアクティブ・ノイズコントロール機能は、シビックの試乗ではさほど意識することがなかった。しかしZR-Vへ乗ってみると、ザラついたエンジン音が明らかに大きい。聴覚的な質感へ、しっかり影響しているようだ。

シビックの高得点までには届いていない

走行時の振る舞いも、シビックとは同一ではない。滑らかに加速する場面が多い一方で、アクセルペダルの踏み方によってはエンジンの回転数が不意に上昇することも。同時に、車内へ大きめのエンジン音が響いてくる。一貫性では及んでいない。

こんな比較をしたくなる理由は、ZR-Vが優秀なシビックと実際に似ているから。全体的な印象も確かに近く、内容は優れているものの、その高得点までには届いていないように思う。

ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)
ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)

ハッチバックとクロスオーバーがベースを共有する事例は、他メーカーでも珍しくない。しかし、明確に個性などを区別化することでオブラートに包み、直接的な比較対象にならないよう努めているのが実際だろう。

だとしても、ドライビングポジションへ納得すれば、ZR-Vはこのクラスでかなり有力な選択肢になるはず。乗り心地や操縦性は秀でており、燃費も良く、インテリアの雰囲気も好ましい。運転支援システムやインフォテインメント・システムの完成度も高い。

ただし、英国では価格が足を引っ張るかもしれない。この地でのエントリーグレードになるエレガンスは、3万9495ポンド(約715万円)からに設定された。

これは、ルノー・オーストラルのトップグレードと同等。日産キャシュカイ eパワーのトップグレードの価格にも近い。

ミドルグレードのスポーツを選ぶと、4万1095ポンド(約744万円)へ上昇する。レザーシートにパノラミック・ガラスルーフ、ボーズ社製の高音質ステレオなどが装備される。トップグレードのアドバンスは、4万2895ポンド(約776万円)だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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