シビック譲りの優等生 ホンダZR-Vへ英国試乗 乗り心地と操縦性は◎ 価格はお高め 前編

公開 : 2023.08.31 08:25

有能なシビック譲りのハイブリッドを搭載したクロスオーバー、ZR-V。英国編集部が期待の新モデルを評価しました。

シビックをクロスオーバーに仕立てたZR-V

新モデルのZR-Vは、ホンダにとって重要なポジションにあるに違いない。ヒョンデ・サンタフェなどの正当なライバルになるべく、新しいCR-Vはボディサイズがひと回り大きくなった。その隙間を埋め、他ブランドへユーザーが流れるのを防ぐ役割がある。

「ディーラーでは、このクルマの登場へ非常に期待を寄せています」。と興奮気味に話すのは、英国向けモデルの責任者を務めるアンドリュー・ウィンドフィールド氏。「従来以上の売上げを見込んでいます」

ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)
ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)

CR-Vよりひと回り小さいZR-Vは、ざっくりいうならシビックをクロスオーバーに仕立てたモデル。全高は200mmほど増しているが、4568mmの全長はほぼ同じ。英国では9月から納車が始まり、ハイブリッドのみの提供となる。

実際、シャシーやハイブリッド・パワートレイン、ダッシュボードなどをシビックと共有する。英国仕様のボンネット内に収まるのは、最高出力143psの自然吸気2.0L 4気筒エンジンだ。

この内燃エンジンは、183psの駆動用モーターか、1.05kWhの駆動用バッテリーに電気を供給するのが主な役目。高速道路などエネルギー効率で有利な場面では、トランスアクスルのクラッチが繋がり、フロントタイヤを直接駆動することもある。

市街地など日常的な環境では、物理的にエンジンはタイヤと独立しており、ソフトウエアが自在に回転を制御する。必要なければ休止するし、ATで走行している時のような、回転数の変化を真似ることもある。充電のため、高い回転数を維持することもある。

シビックで見慣れた好印象なインテリア

好印象なインテリアも、シビックで見慣れたもの。エアコンの送風口が横方向に伸びる、シンプルなダッシュボードのデザインは同一といえる。クリック感のあるボタンが並ぶエアコンの操作パネルも共通しており、使い勝手に優れる。

インフォテインメント用に9.0インチのタッチモニターが据えられるが、グラフィックはもう少し鮮明に表示されてもいいだろう。ショートカット・メニューとワイヤレスでのスマートフォン・ミラーリング機能に対応し、機能性は悪くないが。

ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)
ホンダZR-V e:HEV アドバンス(英国仕様)

内装に用いられる素材は、シビックより1ランク上。ドアパネルでは、ソフトタッチ加工される領域が増え、センターコンソールの下には悪くない大きさの収納トレイも用意される。ZR-VにはMTがないため、より実用性を高めたデザインになっている。

ステアリングホイールの奥には金属製のパドルが配されるが、これはホンダとしてはハイブリッド・スーパーカーのNSX以来。ただし変速ではなく、回生ブレーキの強さを選ぶためのアイテムだけれど。

ZR-Vで少し違和感を感じたのが、ドライビングポジション。クロスオーバーらしく目線はやや高めながら、シビックのように背もたれは倒れ気味になる。

両足を前方へ投げ出し、調整域の広い快適なシートへ身を委ねる格好になり、一部のユーザーには喜ばれるかもしれない。だが、背もたれを起こしたSUVらしい姿勢を望むユーザーからは、共感を得にくいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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