「欧州テイスト」の中国車、どこから生まれる? 好まれる “乗り心地” の違いとは ニオ(NIO)

公開 : 2024.04.05 06:25

中国EVメーカーのニオは欧州市場の嗜好に合わせた車両開発のため、「ヨーロピアン・テイスト」のドライビング・キャラクターを形成しようとしている。その一翼を担う英国のエンジニアを直撃した。

欧州市場に注力するニオ

中国のEVメーカーであるニオ(NIO)は、欧州市場のユーザーの嗜好にあった車両開発を進めている。その舞台となっているのが、英国オックスフォードシャーの工業団地にある控えめな外観のワークショップだ。

この地域はF1やフォーミュラEなどのモータースポーツチームや関連企業が集まることから「モータースポーツ・バレー」とも呼ばれている。ニオはここで、EVに「ヨーロピアン・フレーバー」なるものを与えようとしているのだ。

ニオの電動セダン「ET5」
ニオの電動セダン「ET5」

ニオはすでにノルウェー、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマークで発売しているが、英国は未導入である。最新の声明では、右ハンドル市場を含むさらなるグローバル展開の一環として、2025年に英国で販売開始することが示唆されている。

ニオのワークショップで少人数チームを率いるチーフ・エンジニアのダニーロ・テオバルディ氏は、アウディBMWメルセデス・ベンツジャガーが独占してきた高級車セグメントで消費者に期待されるドライビング・キャラクターを、新型EVに反映していると語った。

「オックスフォードシャーには、非常に経験豊かで才能のある人々が働いています。ルーティン・エンジニアリングではなく、『アトリビュート・インテグレーション』と呼んでいるクルマの挙動を開発しています。どのモデルにどのようなサスペンションを採用するかといったハードウェアの決定に当初から参加し、開発サイクルの中でそれを改良していくのです」

ベテランエンジニアがキャラクター形成に貢献

イタリア出身で50歳のテオバルディ氏は、これまでにも機械部品と電気部品を組み合わせて調和のとれたドライビング・キャラクターを開発するプロセスに携わってきたという。

テオバルディ氏はイタリアのイタルデザインで車両コンセプトの責任者を9年間、中国ベースのブランド、Qorosで車両アーキテクチャーと先進エンジニアリングの責任者を5年間務めた。その経験を買われ、2016年のニオ設立時に先進エンジニアリング担当ディレクターに任命された。

ニオの電動SUV「EL7」
ニオの電動SUV「EL7」

就任後すぐに、上海、北京、合肥、南京、ミュンヘン、サンノゼにある同社の車両開発事業をサポートするサテライト事業として、英国オックスフォードシャーにエンジニアリング・センターを設立した。

それ以来、欧州5か国で販売中のET5、ET5ツーリング、EL6、ET7、EL7など8車種に同センターの意見が反映されている。中でも、特に重視しているのはシャシー・チューニングだ。

「お客様のご要望の違いや路面コンディションの違いを考慮しながら、それぞれの市場に特化したサスペンション・チューニングを開発しています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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