目新しいラグジュアリーなインテリア

マクラーレンGTは、目新しい。乗り始めて280kmほど走っても、発見の連続だった。でも勝算は911ターボSにあるのでは、と多くの読者は想像するだろう。

マクラーレンGTのインテリアからは、明確な意図を感じ取れる。モータースポーツで鍛え上げてきたブランド像を考えると、ラグジュアリーな雰囲気の車内は新鮮でもある。

マシンフィニッシュの表面が与えられたシフトパネルは、メルセデスAMGにも付いていそうなでき。ステアリングホイールのトリムパネルは、サテン風。センターコンソールに配されたピアノブラックのハウジングも、マクラーレンには似つかわしくない。

もちろん、多くのマクラーレン製モデル同様、シャシーやパワートレインの設定を切り替えるダイヤルが付いている。機能として不必要なものはない。

アルカンターラやレザーを縫製するステッチは一糸乱れず、エアコンの送風口を囲むアルミニウムが全体を引き締める。マクラーレンらしくなく、不自然さも残る。

車内が豪華なGTであっても、主要なコンポーネントはほかのマクラーレンと共有している。むしろマクラーレンほど、モデル間で強い関係性を有するブランドも少ないだろう。

真新しいデザインの荷室コンパートメントの下に隠れているのは、3994ccのV8エンジン。小径でレスポンスに優れるターボへ置き換わっているが、マクラーレン720Sに積まれるものと基本的に同じユニットだ。

高速での巡航走行は静かで穏やか

馬力はスポーツ・シリーズと、ワンランク上級のスーパー・シリーズとの間に収まる、620ps。角の削られたマクラーレンのグランドツアラーとしては、かなりのパワーだ。最大トルクは64.1kg-mある。

トランスミッションも見慣れた7速デュアルクラッチAT。サスペンションは、720Sに搭載されるクロスリンク油圧システムは備わらず、より一般的な570Sの構造をチューニングし直して採用している。

アンチロールバーは、GTの専用品。路面の変化に応じて、ダンパーは減衰力が変化する。その瞬間瞬間ではなく、10m程度の距離を走行した中でシステムが判断し、予測的に特性を変化させるという。

高速道路でも笑顔が溢れる。巡航走行時のエンジンは穏やかだが、160km/hを超える速度で走りたいと訴えてくる。マクラーレン製のほかのモデルと比べると、車内は明確に静か。風切り音もロードノイズも、小さい。

大きなサイドミラーが気流を乱しそうにも見えるが、ボディは滑らかに空気の中を進んでいく。新しい電動シートの取り付け位置はやや高め。クッションが効きソフトで、サポート性も良い。

カーボンファイバー製のモノコック、モノセルIIのメリットも大きい。エンジンの上に420Lの荷室空間が生まれるよう、エグゾーストシステムとあわせて変更が加えられている。

280kmほどを走行し、マクラーレンGTは十分に温まった。911ターボSに対し、勝利を掴めそうな気がしなくもない。

この続きは後編にて。

画像　マクラーレンGT／911ターボS　全105枚