【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #44】1990年ポルシェ911カレラ2(964)「王道といえる後輪駆動モデル」

公開 : 2026.11.01 09:11

世界的な人気モデルとして支持され、サーキットでも数えきれぬ栄光の記録を刻んできたポルシェ。日曜日の午前9時11分に公開する、そんなポルシェの足跡を膨大なアーカイブと共に振り返る連載です。#44は『1990年ポルシェ911カレラ2(964)』です。

1990年ポルシェ911カレラ2(964)

4輪駆動システムを量産スポーツカーで現実のものとしたポルシェ911カレラ4(タイプ964)は、新たな指針としてライバルたちに大きな衝撃を与えた。

カレラ4がデビューした翌年となる1989年に、ポルシェは964の1990年モデルを発表する。そのラインナップに加えられたのが、911にとって王道といえる後輪駆動のカレラ2だった。

1990年ポルシェ911カレラ2(964)
1990年ポルシェ911カレラ2(964)    ポルシェ

カレラ2はカレラ4と並行して開発されていたが、ポルシェはあえて1年空けて1990年モデルとしてカレラ2をリリースした。モデル名は4輪駆動を意味する『カレラ4』に対し、後輪2輪を駆動することから『カレラ2』とされた。

また、1990年モデルから伝統のタルガとカブリオレがカタログに追加され、好みでボディタイプを選べるようなった。

964には、それまでの911(930)に欠けていた快適装備や機能が数多く導入された。それらは、パワーステアリング、デュアル・フロント・エアバッグ、デュアルマス・フライホイール、ABSなどだ。

カレラ2にはティプトロニックと名付けられた待望のオートマティック・トランスミッションが用意されたのがニュースだった。

基本的なメカニズムはカレラ4と共通

リアエンジン後輪駆動(RR)レイアウトを採用したカレラ2は、基本的なメカニズムに関して、駆動方式以外はカレラ4と共通だった。リアに搭載される3.6リッターの水平対向6気筒エンジンは、カレラ4と変わらぬ250hpを発揮した。

車両重量はカレラ4の1450kgに対しカレラ2は1350kgと100kgも軽量であり、よりスポーティで運転の楽しさに優れていた。そのため、1984年式に登場した『911カレラ3.2』の真の後継モデルと見なされている。

1990年モデルから伝統のタルガがカタログに用意された。
1990年モデルから伝統のタルガがカタログに用意された。    ポルシェ

一見するとお馴染みの911スタイルを受け継ぐが、実際にはバンパーがボディと一体化されるなどの変更が加えられ、構成部品の85%が新設計とされていた。

クーペは、純粋にスポーツドライビングを楽しみたいエンスージァストから選ばれるモデルであり、一方のタルガやカブリオレは、オープンエアの開放感とともに911を楽しみたい層から支持を集めた。

外観的にはカレラ2はカレラ4と全く同じだが、エンジンリッド上のバッジが『4』ではなく『2』となっている点が唯一の識別点である。

オートマティック・トランスミッション『ティプトロニック』を追加

1990年1月からは、カレラ2の各ボディタイプに、マニュアル操作も可能な新開発のオートマティック・トランスミッション『アダプティブ・ティプトロニック・ギアボックス』が選択できるようになった。

ZF製の4速オートマティック・トランスミッションはトルクコンバーター式で、ギアボックスはZF、電子回路をボッシュ、そしてポルシェの3社共同で開発された。

オープンモデルのカブリオレは1990年モデルから追加。
オープンモデルのカブリオレは1990年モデルから追加。    ポルシェ

通常の2ペダルオートマティック・モードに加え、『ティプトロニック』モードでは、ドライバーが手動でギアを選択することを可能にしていた。

フロアにあるセレクターレバーは、通常のP、R、N、D、3、2、1位置に加え、もうひとつのゲートが並行して設けられていた。セレクターレバーを右側に倒し、レバーを前方に操作すればシフトアップ、後方に操作すればシフトダウンができた。シフトアップを忘れても、エンジン回転数が許容上限に達するとギアボックスが自動的に上のギアへとシフトアップする仕組みだった。

電子制御システムには5種類のシフトプログラムが用意され、ドライバーの運転スタイルや交通状況に応じて、最適なシフトタイミングを選択するプログラムが作動する。また、よりスムーズな変速を実現するために、点火時期を遅らせて一時的にエンジン回転数を低下させる制御も行われている。

後継モデルのタイプ993からはステアリングホイール上のロッカースイッチで操作できるようになるが、964ではフロアのセレクターレバーのみで操作する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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