驚くほどたくましい直6ディーゼルターボ

センターデフのトルク分配割合やリミテッドスリップ・デフ、ステアリングラックの設定も、アルピナ独自のもの。これらを融合させ、安定性や操縦のしやすさ、動的性能やドライバーの充足感などを、最大限に高めている。

アルピナの明確な意図で仕立てられたD3 Sは、見事にその目標を達成している。流れるような重さの変化や、路面からのフィードバックなど、ステアリング・フィールは典型的なBMWを大きく凌駕する。

丁度いい大きさのファミリー・ステーションワゴンでありながら、操縦性は極めて正確。ディーゼルエンジンが生み出す豊かなトルクが混ざり合い、実際の1935kgではなく、1700kgくらいのクルマのように操れる。

アルピナの息がかかった直6ディーゼルターボは、驚くほどにたくましい。アクセルペダルを踏み込めば、電圧48Vのマイルド・ハイブリッドが即座に加勢。ほどなく74.2kg-mの最大トルクが湧出し、ためらうことなくボディを突き進める。

現実世界で、ここまで速いと感じるステーションワゴンは多くはない。この速さを引き立てているのが、賢明に設定された8速AT。コンピューター上や燃費効率での結果だけでなく、実際に運転を愛するエンジニアによってプログラムされているに違いない。

気になる点は、ほとんどない。乗り心地は、全般的に非常に優れる。ただし、荒れた路面では少し落ち着きのない場面があり、ロードノイズもやや目立つ。スーパーカー級の速さのB3とは違って、D3の場合はその長所を霞ませてしまう。

最大のライバル、アウディS4を大きく凌ぐ

トルクの太いディーゼルターボは、ゆったりとしたロングドライブに適している。だがシャシー設定は、462psと305km/hを繰り出すB3に最適化された印象がある。標準の19インチホイールの方が、D3の特徴を活かすという点で理にかなっているだろう。

走行中に受ける印象は、B3とM340i xドライブとの違いより、D3 SとM340d xドライブとの違いの方が小さい。そのかわり、価格差も9000ポンド（123万円）ほど小さい。

そうとはいえ、この比較は適切ではないだろう。ブレーキペダルのフィーリングからシャシーの備えるドライバーの調整しろなど、まとまりがあり充足感の高いドライビング体験は、最大のライバルといえる、アウディS4を大きく凌ぐ。

マイルド・ハイブリッドとなった、最新のアルピナD3 Sツーリング。ディーゼルのスポーツワゴンとして、優れた立ち位置にいることに変わりはない。

アルピナD3 Sツーリング（欧州仕様）のスペック

価格：5万5950ポンド（783万円）
全長：4719mm
全幅：1827mm
全高：1440mm
最高速度：270km/h
0-100km/h加速：4.8秒
燃費：13.2km/L
CO2排出量：198g/km
車両重量：1935kg
パワートレイン：直列6気筒2993ccターボチャージャー＋ISG
使用燃料：軽油
最高出力：355ps/4000-4200rpm
最大トルク：74.2kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス：8速オートマティック

画像　アルピナD3とB3　高性能ステーションワゴンを比較　全136枚