もうすぐ買えなくなる『最後の純血アルピナ』(1)D3 Sリムジン編【スーパーカー超王が斬る】

公開 : 2026.05.25 11:45

2025年末でブランド商標権をBMWへ譲渡し、新型車開発や生産を終了した『アルピナ』。日本でも在庫限りの状況です。そんなもうすぐ買えなくなる『最後の純血種』を、スーパーカー超王こと山崎元裕が味わいます。その前編です。

訪れた歴史的な節目

BMWのプロダクトをベースに、よりハイパフォーマンスで、かつラグジュアリーなモデルをプロデュースしてきた『アルピナ』。

正確には創業者の名前を掲げた『アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン』という社名を持つ、この世界でもおそらくは最も小さな自動車メーカー。同社にまさに歴史的な節目が訪れることが世界中のカスタマーやファンに告げられたのは、2022年3月のことだった。

2025年末をもってアルピナ・ブランドの商標権はBMWへと譲渡された。
2025年末をもってアルピナ・ブランドの商標権はBMWへと譲渡された。    佐藤亮太

それは2025年末をもってアルピナ・ブランドの商標権はBMWへと譲渡され、同時にアルピナ自身による新型車の開発や生産を終了するという衝撃的なもの。それを聞いた多くの者は、「なぜ」という言葉を発するほかはなかったはずだ。

その後BMWには、『BMWアルピナ』という新たなブランドが設立され、同社はそれをロールス・ロイスとBMWの間を担うブランドとしてポジショニングする。

先日イタリアで開催されたコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでは、早くもそのBMWアルピナの将来を示唆する流麗な2ドアクーペのコンセプトカー、『ヴィジョンBMWアルピナ』を発表。BMWアルピナが確実に未来に向けての歩を進めていることがアピールされた。

新会社では独自モデルを少量生産

一方のアルピナは『アルピナ・クラッシック』の名のもとで、これまで生産したモデルのメンテナンスやパーツ供給を継続するとともに、新会社として『ボーフェンジーペン』を設立。ここから独自のモデルをやはり少量生産するプランを打ち出している。

ファーストモデルとなるのは、昨年のヴィラ・デステで実車が初披露された『ザガート』。その名のとおりザガートのデザインによるこの99台の限定生産車のベースは、BMW M4だった。ボーフェンジーペンもまたその新型車開発のベースには、今後も変わることがないだろうBMWとの友好的な関係があったのである。

昨年のヴィラ・デステで発表された『ボーフェンジーペン・ザガート』。
昨年のヴィラ・デステで発表された『ボーフェンジーペン・ザガート』。    ボーフェンジーペン

このような事情を知れば、今回レポートするモデルが、今後いかに貴重な存在として語られるかがクリアなものになるだろう。既にブッフローエにある本社工場でアルピナの生産は行われていない。

だから純血種とでも表現できるアルピナが、これまで伝統的に受け継いできた確固たる哲学を正確に受け継ぎ、そして彼らがもうひとつの誇りとするクラフトマンシップが生み出した新車を購入することはできなくなる(編集部注:日本では在庫限りといった状況)。

2022年にあの発表があって以来、筆者は最後に乗るアルピナの新車は何になるのかを常に考えるようになった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 撮影

    佐藤亮太

    Ryota Sato

    1980年生まれ。出版社・制作会社で編集経験を積んだのち、クルマ撮影の楽しさに魅了され独学で撮影技術を習得。2015年に独立し、ロケやスタジオ、レース等ジャンルを問わない撮影を信条とする。現在はスーパーカーブランドをはじめとする自動車メーカーのオフィシャル撮影や、広告・web・雑誌の表紙を飾る写真など、様々な媒体向けに撮影。ライフワークとしてハッセルブラッドを使い、生涯のテーマとしてクラシックカーを撮影し続けている。佐藤亮太公式HPhttps://photoroom-sakkas.jp/ 日本写真家協会(JPS)会員
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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