【最新EV対決】前編 欧米各社の電動化対策 来るべきエンジン車廃止 既存メーカーの現在地を探る

公開 : 2021.04.03 11:05  更新 : 2021.07.12 18:48

脱炭素社会のお題目のもと、内燃機関に逆風が吹く昨今。メーカーは電動化を強いられていますが、EVは似たり寄ったりとの印象がまだまだ強いのではないでしょうか。そこで、欧米3社の最新モデルを集め、その個性を探ります。

加速する電動化の現在地

text:Simon Davis(サイモン・デイヴィス)
photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)

時が過ぎるのは、なんと早いことか。初代日産リーフ三菱アイ・ミーブ、そのプジョー版であるイオンが登場したのが、まるで昨日のことのように思える。小容量のバッテリーと低出力の電気モーターを積んだそれらに、大衆向けのパーソナルな移動手段の未来像を垣間見て、興味を覚えたものだ。

翻って2021年現在、それら黎明期の量産EVはまったく奇抜なものに感じられなくなった。事実、英国では2030年までに内燃エンジン車の新車販売が打ち切られることが決まったのだから、それら初期のEVが示した新たな電動化時代は、いまや動かしようのない近くて現実的な将来になったといえる。

フォルクスワーゲンとフォード、そしてポールスター擁するボルボ。既存のエンジン車を生産してきたメーカーが、電動化を強いられる時代にどう対応するのか、それを占う3台を比較試乗した。
フォルクスワーゲンフォード、そしてポールスター擁するボルボ。既存のエンジン車を生産してきたメーカーが、電動化を強いられる時代にどう対応するのか、それを占う3台を比較試乗した。    Luc Lacey

突如として起きたように思えるが、気が付けば新車市場には、安価なものからそうではないものまで、今や全般においてバッテリー動力が普及している。かつては内燃エンジンしかなかったような領域においてもだ。

良かれ悪しかれ、英国におけるEV比率は拡大し続けるはずだ。実用的で、価格も現実的なメインストリームモデルが増え、それにより販売台数も、その結果としてのマーケットシェアも、ひたすら右肩上がりに増加する一方となるだろう。

そうなると、疑問も湧く。今日のEVのリアルなキャラクターは、いったいどのようなものなのか。また、迫りくる内燃エンジン追放に向け、EVのさらなる普及へ弾みをつけるに足るものとなっているのか。それとも、まだまだ改善すべき余地が山積みなのだろうか。

大メーカーの未来を担うEV

そこで、メインストリームとなりそうなモデルのサンプルとして選んだのは、自動車メーカーとしてはメインストリーム中のメインストリームといえる2大巨頭、フォルクスワーゲンとフォードの最新EVだ。

どちらも、EVブームの寵児であるカリフォルニア生まれのブランドほどには、電動化において素早く立ち回ったわけではないだろう。それでも、この1年ほどの間に、プログラムは本格的に動きはじめた。

スポーティさは望めないID.4ではあるが、実用的で扱いやすく、完成度も高い。
スポーティさは望めないID.4ではあるが、実用的で扱いやすく、完成度も高い。    Luc Lacey

フォルクスワーゲンにとって、最初にリリースしたEV専用モデルはID.3だが、新たな電動化時代の覇権がウォルフスブルグにもたらされるとすれば、それは今回のID.4のほうによってだろう。

その理由のひとつは、欧州市場では比較的安価で、プレミアム感のあるクロスオーバーへの需要が非常に大きいということが挙げられる。もうひとつには、これが中国と北米にも生産施設を構え、重要なマーケットにおけるフォルクスワーゲンのEV販売戦略の嚆矢となるクルマだという点だ。これは大きなビジネスになるだろう。

いっぽうのフォードも、EV量産開始にあたり、同じくSUV的なモデルを用意してきた。しかし、こちらのほうが物議を醸すことになりそうだ。もちろん、車名に関するものである。クロスオーバーでありながらマスタング・マッハEとは、ずいぶん思い切ったネーミングではないか。

フォードの象徴的なモデル名を用いることで、イメージ的な商品力は高まるだろう。さらに、SUVならではの実用性やユーザーフレンドリーさに加え、魅力的な走りへの期待感も盛り上げてくれる。

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