最大81ps増しのアップデート フォルクスワーゲンID.4へ試乗 優れた能力を底上げ

公開 : 2023.09.19 19:05

世界で最も売れているBEV、ID.4がアップデート 駆動用モーター増強で最大81ps増し タッチモニターも拡大 能力を底上げ

順調とはいえなかったID.4のスタート

フォルクスワーゲンID.4のスタートは、順調とはいえなかった。COVID-19が不意に流行し、世界中がロックダウン。半導体不足へ陥り、追い打ちをかけるようにロシアのウクライナ侵攻が勃発。部品供給が遅れ、生産は滞った。

加えて定評のあるブランドが故に、航続距離や内装の品質、安定しないインフォテインメント・システムなどに不満が寄せられた。同価格帯のライバルと比較し、明確に劣っていたわけではなくても。

フォルクスワーゲンID.4 プロ・パフォーマンス(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.4 プロ・パフォーマンス(欧州仕様)

2023年に入り、少なくともウイルスを原因とする状況は改善。フォルクスワーゲンは改良を加えることで、ID.4の形勢を立て直そうとしている。既に、世界で最も売れているバッテリーEVではあるのだけれど。

今回の改良は、あくまでも年次的なアップデートだという。それでも、2024年仕様ではパワートレインの能力が大幅に向上。各部の制御ソフトウェアも、しっかりバージョンアップされている。

インフォテインメント・システムもソフトウェアが最新版になり、タッチモニターは大型化。夜間に操作しにくいと指摘されていた、エアコンの温度調整などを担うタッチセンサー式のスライダーにも、イルミネーションが実装された。

ステアリングホイールのデザインも一新。小さなメーター用モニターの横に突き出ていたシフトセレクターは、ステアリングコラム側へ移された。

後輪駆動版は81ps増しの286psへ

リア側の駆動用モーターは、パサート・クラスのバッテリーEV、ID.7が搭載するAP550型という新しいユニットへ置換。シングルモーターの後輪駆動と、ツインモーターの四輪駆動、2種類が設定されることに変わりはない。

後輪駆動のID.4 プロ・パフォーマンスでは、従来より81psと23.8kg-mもパワフルになり、286psの最高出力と55.4kg-mの最大トルクを発揮する。かなりの増強といえる。

フォルクスワーゲンID.4 プロ・パフォーマンス(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.4 プロ・パフォーマンス(欧州仕様)

四輪駆動のID.4 プロ 4モーションでは、システム総合での最高出力が299psで、50ps増しとなる。トップグレードのID.4 GTXでは、40ps増しの340psを獲得。シングルスピードのリダクションギアも、改良を受けている。

これほどの数字の変化だから、実際に発進させてみると予想通り出だしから鋭い。中間加速にも、常に豊かなパワーが控えている印象がある。滑らかで洗練された質感は変わらず、パワーデリバリーは一層リニアで、扱いやすさも向上したようだ。

0-100km/h加速時間などはまだ発表されていないが、フォルクスワーゲンは大幅に短縮したと主張する。最高速度も、160km/hから180km/hへ高まった。

新しい駆動用モーターは、熱の制御を改善することで、高い能力を安定的に発揮することも可能になったという。実際、アクセルペダルを繰り返し深く踏み込んでも、加速の勢いに目立った変化は見られなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事