【なぜ?】ノート・クロスオーバー登場 日産がまたも「ノート」に頼ったワケ

公開 : 2021.10.09 05:45  更新 : 2021.10.22 10:06

エース「ノート」頼みになるワケ

ノート・オーテッククロスオーバーが開発された3つ目の理由は、日産がホームグラウンドとされる国内よりも海外市場に重点を置いた結果、国内の売れ筋車種が減り、開発費用も掛けられない状態になったことだ。

日産の国内における新車販売状況を見ると、軽自動車が約40%を占める。

日産ノート・オーラ
日産ノート・オーラ    日産

そこにノート(オーラを含む)とセレナの登録台数を加えると、国内で売られる日産車の70%に達する。

つまり今の日産の国内販売は、デイズ+ルークス+ノート+セレナの4車種だけで支えているわけだ。

ほかのエクストレイルリーフスカイラインエルグランドなどは、すべて「残りの30%」に片付けられてしまう。

そうなると、売れる見込みのあるデイズ、ルークス、ノート、セレナをいかに活用するがが重要になる。

スカイラインやエルグランドは、もはや手を加えても、売れ行きを伸ばすのが困難な状況にあるからだ。

ただしデイズとルークスは軽自動車だから、メーカーや販売会社の得られる1台当たりの粗利も少ない。

売れ行きをさらに増やしても、儲けはあまり伸びない。

その点でノートは、軽自動車に比べると、販売の増加がもたらす経済的な効果が大きい。

しかも現行ノートは国内専用に開発され、なおかつノーマルエンジンは廃止した。

国内市場において、高価格のeパワー(ハイブリッド)だけで相当に売れ行きを伸ばさないと収支があわない。

そして価格が高いから、好調に売れると儲けも効率良く増やせる。

そこでノートは、ノート・オーラ、ノート・オーラ・ニスモ、ノート・オーテック・クロスオーバーという具合に「ノート・シリーズ」を矢継ぎ早に充実させている。

表現を変えるとノート・オーテック・クロスオーバーの投入は、日産の国内販売状況を反映したものといえそうだ。

「シーギア」の二の舞にはならない

以上のようにノート・オーテック・クロスオーバーが登場した背景には、SUV市場の急速な拡大、開発や製造面におけるSUVの高効率、効率を追求せざるを得ない日産の事情がある。

ただし、ノート・オーテック・クロスオーバーが好調に売れるか否かは分からない。

日産ノート・シーギア
日産ノート・シーギア    日産

先代ノートも2017年にSUV風のシーギアを設定しながら、売れ行きが伸び悩んだからだ。

もっとも先代ノートは2016年にeパワーを追加しながら、2017年に登場したシーギアは、当初eパワー搭載車を用意しなかった。

2018年に加えたが、ノート自体の発売から6年を経過しており、開発や売り方の失敗もあった。

また先代ノート・シーギアは、最低地上高を拡大したものの、外観のカッコ良さはいま一歩だった。

その点で新しいノート・オーテック・クロスオーバーは、2WDの最低地上高が145mm、4WDでも150mmにとどめながら、外観はノート・シーギアよりもバランスが良くSUVらしさも濃厚だ。

ちなみに最低地上高を200mm前後まで高めると、悪路のデコボコを乗り越えやすくなるから、本格的な悪路に入り込むことも可能になる。

そのためにはシャシーや足まわりの本格的な強化も必要になるから、ノート・オーテック・クロスオーバーは145-150mmに抑えた事情もある。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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